第5章 マテールの遺跡
「いった…」
どうやら落ちた先が砂でクッションになってくれたようだ。
それにどこからか綺麗な歌声が聞こえていた。
「あんな殿っ!?」
「…トマさん!」
突然名前を呼ばれ振り返ると、そこは探索部隊のトマさんと倒れている神田とアレンの姿があった。
「神田!アレン!」
急いで二人の元へと駆け寄る。
二人とも息はしている。ただ怪我の具合が酷い。
その姿に思わず泣きそうになるが、グッとこらえる。
「先ほどAKUMAとの戦闘でやられた傷です。AKUMAは破壊しイノセンスもあちらにあります」
そう言ってトマさんが指を刺した方向には綺麗な歌声で歌う人形がいた。
「じゃあ回収してすぐに二人を病院へ」
「待って、ください…」
「アレン!気が付いたんだね。今病院に連れてってあげるから」
「僕は、大丈夫です。それよりも神田を」
「うん。待ってて。今イノセンスを取ってくるから。だから…手を離してアレン?」
早く二人を病院に連れて行きたい。それなのにアレンは私の手を離そうとしないのだ。
「あんな殿、実は…」
言いづらそうにトマが切り出す。
そしてここまでの事を話してくれたのだ。
どうやらそこで歌っている人形とその傍らに倒れている人と約束をしたそうだ。
その人が人形を壊すと。
あの人形はきっとそう長くは持たないだろう。
それなら少しばかり願いを聞いてあげてもいいのでは?そう思った。
「じゃあトマさんは神田を病院までお願い。そしたら今度はアレンを運んでくれる?私がここでイノセンスを見てるから」
「分かりました。ウォーカー殿すみませんが少し待っていて下さい」
トマは急いで神田を病院へと連れて行った。
「ごめんね、アレン痛む?」
「…少しだけ」
「もう少し待っててね。寝てていいよ」
「いえ、そういうわけには…」
アレンは責任を感じているのだろう。
傷ついた左腕をギュッと掴みながら下をうつむいている。