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忍たま☆ちょっと変わった迷い人 の段

第1章 きり丸の拾い人 の段


「あぁ、確かに開いてないけど・・・これは酷いな」

半助が見た傷口は歪な塞がり方をし、素人仕事とはっきりわかる。

「これ、自分で手当てしたろ、くん」

呆れて呟くと、はあっけらかんと肯定した。

「そうでーす。忍務中だったん、潜入をいちいち抜けるの面倒で、後でちゃんと医者行こうと思って」

「で、君は今休暇中のはずだけど、なんでそのままなの?」

「それを話すと長くなります」

「最初の処置が悪い。端々から血がにじんで、出血が全然止まってない。雨に当たって悪化してる」

「雨降ると思ってなかったんですよ」

続く二人の押し問答。ピリピリとした探りあいの空気が流れる。

きり丸は、

(わー、こわ、先生怒ってるよ・・・離れとこ)

と傍観を決め込んだ。

と半助の駆け引きは続く。

「肩もだけど、胸の包帯は? 隠すだけにしちゃ大袈裟だけど」

「これは心配無用です、さらしは男装の必需品です」

「・・・それ濡れてない?」

「・・・中迄は雨染みてなかったんで、平気です」

ここまで来て、触れる部分が少し気恥ずかしいところになり、二人の勢いが緩む。

きり丸はホッとし会話に割り込んだ。

「ねっ、先生、酷い怪我でしょ」

誉めて誉めてときり丸が半助に笑顔を見せる。

事実なだけに、半助は頷いた。

「あぁ、よくやった、きり丸」

しげしげとその傷をもう一度見る。

(きり丸が何も言わなかったら、新しい布でそのまま塞いだんだろうな)

文句を言いたそうなから、半助は真新しい当て布を奪う。

「これは傷口を綺麗にしてからだよ、くん」

言うが早いか、半助は絞った布で傷口の洗浄を始める。

突然走った痛みに、は思わず声を上げた。

「あっ、つうぅ・・・もうちょい優しくお願いしますよ、土井先生!!」

痛みに歪む声に色気が混じる。

焦った半助は、平常心を保ちながらを押さえつけた。

「くんこそ、もうちょっとおとなしく出来ない?」

「です、私の名前!!」

涙の滲む目で半助に微かな抵抗を示す。何故反抗の表れが『今名を名乗る』だったのか?

潤んだ目で自分を見上げてる
に、半助は必死に平常心平常心と呟いた。
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