第5章 お台所と料理人 の段
「おばちゃん、な、何言ってるんですか!?」
は慌てておばちゃんに詰め寄る。
その隣で半助もおばちゃんににじり寄った。
だが、当のおばちゃんはというと、ケロッとした顔で
「あら、違うのかい? 皆が話ししてたもんだから」
とを見る。
(どうしよう・・・違わないだけにどうしよう・・・)
は困って半助を見る。
忍仲間なら適当に誤魔化すが、相手は美味しいご飯をくれる食堂のおばちゃん。
は対応に困る。
半助がどう動くか、助けを求めた。
だが、当事者のは動揺して聞き流したところに、半助は気付き、以上に慌てていた。
「あの、おばちゃん・・・」
が言いよどんでいるところに、半助は横から口を挟んだ。
「あの、ちなみに『皆が話してた』の『皆』ってのは誰の事です?」
半助がおばちゃんに聞くと、が途端にギョッとした顔で半助に目を見開く。
(ホントだ!! 皆って誰だ!?)
はすぐさま、おばちゃんに顔を向き直る。
半助とに見つめられ、おばちゃんは少しキョトンとしたものの、すぐに困った様に頬をポリポリ掻く。
「いや、炊き出しの時にたまたま盛り上がってたところから聞こえてきたから、あたしも『あぁ、そうなのか~』って・・・」
「「その盛り上がってたのは誰ですか!?」」
答えの出ない事に焦ったと半助は、思わず叫ぶ。
見事にハモった二人に、
「あら~、息がぴったり」
と的外れな発言をしたおばちゃんだったが、すぐにゆっくり口を開く。
「あたしが聞いた時に話をしてたのはーーーー」
おばちゃんはその名をゆっくり呟く。
それを聞いた二人は、すぐさま食堂を飛び出す。
「すみません、おばちゃん、詳しくは後程! とりあえず今の話は黙ってて下さい!!」
は一応口止めをするのを忘れない。
だが、走り去る二人の後ろから、おばちゃんの
「あたしが黙ってるくらいじゃ意味ないと思うけどねぇ」
と呟く声が聞こえたのは、気のせいだと思いたかった。