第5章 お台所と料理人 の段
「あら~、土井先生にちゃん」
二人は不意に聞きなれた声に呼ばれ、同時に振り返った。
「食堂のおばちゃん!!」
「いつ戻られたんですか!!」
そこには、いつもの姿で大きな荷物を背負った、食堂のおばちゃんがいた。
荷物が重たかったのか、荷を下ろすとくたびれた様子で肩を回す。
額には、以上に汗が浮かんでいた。
「おばちゃん、炊き出しは?」
が聞くと、おばちゃんは肩を叩きながら、フウッと息を吐いた。
「終わったわよ。いい人達で、いらないっていうのにお礼だっていろいろくれてねぇ~」
そう言って、荷物を指差す。
確かに、包みの隙間から、何やら食材らしきものが覗いていた。
は荷物を見ながら、
「荷ほどき、手伝いましょうか?」
と声をかける。
すると、おばちゃんはゆっくりと首を横に振った。
「いや、いいわよ。後でのんびりボチボチ片付けるから。それよりちゃん、悪かったわね~。皆のご飯作ってくれたんだって?」
一年生に聞いたわよ~、とおばちゃんは笑って言う。
そこで、ふと。半助とは同じところに引っ掛かりを覚えた。
(さっきは気のせいかと思ったけど・・・)
(やっぱり言ったよな・・・)
半助とは目配せする。
そして頷き合うと、半助がゆっくり口を開いた。
「あの~、おばちゃん、くんのこと、今まで『ちゃん』なんて呼んでました?」
半助が言うと、がコクコクと首を縦に振る。
そう、食堂のおばちゃんは、利吉とご飯を食べに来るのことをいつも、『くん』と呼んでいたのだ。
だが、今日、おばちゃんは二度も、『ちゃん』と呼んだ。
一度は聞き流していた二人だが、二回目を聞いて気のせいには出来なくなる。
ジーッとおばちゃんを見ると、おばちゃんは『ああっ!』と言わんばかりに大きく手をポンッと打った。
そして、さらに大きな爆弾を投下する。
「ちゃん、女の子だったんだって? ごめんなさいね~、そんな格好してるもんだから、あたしゃてっきり男の子かと」
「「おばちゃん!?」」
さらりと言ってのけた食堂のおばちゃんに、半助とは同時に叫び声を上げた。