第5章 お台所と料理人 の段
学園内ではあるが半助とが1つ屋根の下で同居を始めて3日。
きり丸が心配そうに(楽しそうに)するのに反し、半助とは何事もない生活をしていた。
いや、実際は全く何もないわけではない。
やはり新しい布団を用意しようとした半助に、『土井先生の布団が落ち着くから、この布団のままがいい』とが半助の布団を握りしめ半助を困らせたり、部屋で無防備に寝るに半助がつい手を伸ばしそうになったり、といろいろはあった。
だが、意外に半助が忙しく、二人きりでいる時間はあまりないまま、時は過ぎていく。
やがて学園には少しずつ人が帰ってきて、活気が増していた。
(予定だと、そろそろ山火事の応援部隊も全員戻ってくる頃か・・・)
半助は昼前の学園を歩きながら、昼食をどうしようか思案する。
食堂のおばちゃんは、山火事復興の炊き出し応援についていっていたと聞いている。
よって、この数日、学園は自炊生活だ。
(さてと・・・今日の昼食は・・・)
そう思っていたところに、遠くから聞き慣れた声がした。
「「土井先生~♪」」
「乱太郎、きり丸」
は組の良い子、乱太郎ときり丸が、砂ぼこりを上げて走りながら半助の元へ駆け寄ってくる。
「どうした、そんなに急いで」
いつになくキラキラした笑顔の子供達に、半助は不思議そうに声をかける。
「今日の昼食は食堂に準備済です♪」
「しかもタダぁ♪」
乱太郎は普通に楽しそうだが、きり丸はさらに目を銭にして輝いている。
タダ飯の力だ。
半助は苦笑しながらも、首をひねる。
学園長先生から、そんなお触れは回っていない。
たった今、今日の昼食をどうするか考えていたところだ。
「誰が作ったんだ? こんな人数分大変だろう」
半助が言うと、乱太郎ときり丸は我が事の様に胸を張る。
そしてニヤリと笑って半助の背中に回った。
二人揃って回り込むと、両手を突き出し、半助の体を前へ前へと押し進める。
「「それは見てのお楽しみ~♪」」
ぐいっ!!
「あっ、おい、ちょっと待て!!」
半助が止める。
だが、乱きりコンビはニヤニヤと半助を食堂に向かって連れて行く。
訳がわからないまま、それでも半助は素直に二人の教え子のするままに任せ、食堂へと向かっていった。