第1章 きり丸の拾い人 の段
しばらく固まる土井半助&きり丸。やがて、鍋のふたが怪しいカタカタ音を奏で出し、先に硬直から溶けたのは半助だった。
「あっ、吹いてる・・・」
ガタッ、痛っ、と二段階に分かりやすい効果音と共に、よろけぎみに半助は炊事場に向かう。
向かいながら、背を向けたままで、
「そっち見ない様にしてるから、とにかく着替えて。ちょっと大きいと思うけど」
と、半助は鍋の蓋を開けに小走る。
きり丸は、
「うっそだー、ホントにー!?」
と、に食いかかっていく。
「あはははっ、ごめーん、本当ー♪」
笑いながら、は上着を脱いだ。
律儀な半助の『先生チェック=チラチラ視線』はもう外れている。
(土井先生は覗きをする様な性格ではなさそうだから大丈夫でしょ)
結構大胆に上半身を纏う衣を外す。
どうしようかと少し悩んで視線を泳がせていたきり丸は、すぐに、気になる物を発見し、素直にを見上げた。
「うわっ、上半身包帯ぐるぐる巻き・・・服脱いだ位じゃまだ全然肌見えないや」
素直な良い子のは組っ子は、物怖じせずに近寄る。
「うわー、すっげー、すっげー、土井先生、見てー」
「どれ・・・って、見れるか!!」
きり丸に釣られそうになる半助だったが、咄嗟に動きを止めて怒鳴る。
耳がほのかに赤い半助に、の苦笑が届いた。
(何照れてるんだ、私は!!)
鍋を無意味にかき回しながら、半助は項垂れる。
だが、きり丸の発言に気になる部分があったので、すぐに背中越しにに聞いた。
「包帯ぐるぐるって・・・怪我は大丈夫か、くん?」
半助とて、初な少年ではない。いい年の成人男性だ。女が後ろで脱いでるからとて、照れ続ける様な純真無垢ではない。今はむしろ怪我が気になる。
さっきの出血を思い描きながら、半助はの怪我を気にした。
『くん』の怪我を気にされたは、
(そういや名乗り直してなかったなぁ)
と思ったが、相手に背を向けて貰ったまま本名をはじめましてと名乗るのも気が引けた。
とりあえずそのまま、怪我の様子を確認する。
が血の滲むの当て布を外すと、きり丸が
「うげぇー・・・」
と悲鳴を上げた。