第1章 きり丸の拾い人 の段
しばらくそうしているうちに、あっさりは諦めた。
(うん、無理だ☆)
の頭はスッキリ晴れた。
悩む面倒がなくなったからだ。
土井半助は忍術学園の教師である。
世話は焼かないとしながらも、『着替え&手当ては絶対だから♪』という断らせない空気が出ている。先生に自分で出来るかなの指導をされている状況だ。
晩ごはんの支度をすると言いながら、目はしっかりと『のお着替え』をチェックしている。
さすがに教師なだけあって、笑顔の裏に隙がない。
やがて、きり丸が自分のすべき事を終えたのか、物珍しい来訪者『』にまとわりつき始めた。
今のは、土井先生の監視をくぐり抜けながらきり丸をはぐらかす、という状況下にある。
は思った。至極面倒くさい。
(うん、諦めよう)
あっさりと思考は切り替わった。
それだけ、今の状況・・・土井半助の視線がどうにもかわせない。
「えーっと・・・土井先生、きり丸。男と見込んで頼みがあります。聞いてくれますか?」
がそう切り出すと、半助は手を止め、きり丸は首を傾げた。
一瞬の後、
「何? 頼みって?」
きり丸の目がキラキラ輝き、手が銭マークを作る。
そんなきり丸の上に、素早く『土井先生のげんこつ』が落ちた。
「こーら、きり丸!!・・・・あっ、ごめんね、くん。で、何かな? じっくり聞いた方がよかったら火を消してくるけど」
鍋を指差して半助は聞く。
簡単に作れる物なのか、既にいい匂いがし出したそれを止めるのはもったいなくて、は頭を振った。
「いえ、そのままで。言いたいこと自体はすぐ終わります」
は笑って爆弾を落とした。
「私、本当は女なんですよ」
「「・・・・はぁっ??」」
言われた二人は揃ってキョトンする。
「僕じゃなくて、私なんですよ」
「「・・・・ええっー!?!?!?」」
突然落とされた爆弾の意味を理解し、半助ときり丸は大声で叫んだ。
そんな二人を眺めながら、悪びれた様子もないは半助にニッコリ微笑み、トドメを送る。
「という訳で、視線を外してもらえると助かります」
要約=『覗かないでね☆』。
半助は慌てて視線を反らした。その顔は真っ赤になっていた。