第4章 土井先生と同居人 の段
「茶屋で受け取りました」
は言うと、自分は茶に口をつけた。
干菓子を見ながら、その中身を確かめる。
「美味しい菓子を手に入れると何故か私に渡す仲間が幾人かいまして。あの店でいつも受け取るんです。茶屋の主人がちゃっかり毒見して、小分けにしてくれてますからご安心を」
は湯呑みを両手で持ち、お茶を飲む。それから、干菓子を1つ口に入れた。
自分の無事を知らせる菓子。同時にに好意を寄せる菓子なのだろうということに半助は少し複雑な気持ちになるが、菓子は素直に美味しかった。
「そういえば」
は半助を見上げて首を傾げた。
「土井先生は、どうして今回、きり丸と一緒に学園に? 授業の準備できり丸より先に学園に戻られてるものだと思ったんですけど」
は何気なく聞いたのだが、半助は少し答えに躊躇った。
「あんまり格好がつく理由じゃないんだけど・・・」
言い訳の様に前置きしてから、半助は口を開く。
「大家さんに家賃を払い忘れたのと、きり丸のアルバイトで1つ忘れてるものがあったのを思い出して・・・学園に戻った後、もう1回家に戻ったんだ」
情けない口調で言う半助。
は、あまり見たことのない半助の私生活の姿に、微笑ましくも、らしいなと思い苦笑する。
半助は困ったように、おかげできり丸のバイトをさらに手伝わされてうんぬんと言いかけて、
「ごめん、愚痴になってしまったね」
と半助は慌てて頭をポリポリ掻いた。
はクスクス笑う。そして気付く。
(私の周りにはあまりいない空気の人だよなぁ)
半助と一緒に行動してから、自分はよく笑っている、とは思った。
もともと、は笑わない方ではない。
だが、自然と柔らかく笑うというのは意外に難しいものだ。ましてや、普段は男装などしてるから余計にだ。
からかって笑う、飄々と笑う、不敵に笑う、ニヤリと笑う、そんな笑い達とは全く違う。
(土井先生といると、なんか心地よい空気・・・)
お茶を飲んで、ホッと息を吐いたの口から、無意識に言葉が洩れた。
「なんか好きだなぁ・・・」
自分が呟いたと、自身は気付いていなかった。
だが、半助の耳に、その言葉はしっかり届いていた。