第4章 土井先生と同居人 の段
の身体はサラシと包帯でほぼ覆い尽くされている。
見えるのは、無事な肩と、肘、手首の周りだ。
理由はいたって簡単。関節に包帯をかけると動きにくいからだ。
怪我関係なく上半身を包帯まみれにしているのは、いざ身体を見られるような事が起こってしまった際に、胸がある!と思わせる手前で、全身包帯まみれ!と注意を他所に向ける為。
錯覚効果で、一瞬なら充分に効果がある。
そんな包帯まみれの身体から覗くわずかな隙間に埋め尽くされた鬱血痕。
白の中に無数に花開く赤は非常に目立つ。
半助が聞くと、はイタズラっぽく笑った。
「自分でつけました☆」
そう言って、自分の肩に唇を寄せ、チュっと吸い付く真似をする。
『土井先生、先に行くか、ちょっと待ってて下さい』
頭の中に、学園に来る前にふと立ち止まり木の上に消えたの姿がよみがえる。
木の枝に隠れ見えにくかったが、その動きに見覚えがあった半助は、ポンッと拳を叩いた。
「ああ、あの時か」
半助は感心しつつも呆れた。
学園に入る前に既に『保健委員会対策』を済ませていたことになる。
「新野先生がいないのは誤算でしたけど、善法寺伊作くんが居合わせる可能性はある程度高いと思ってましたから。彼の印象的に、『身体に傷があるから見せたくない』って言っても、怪我人を放置しなさそうな子ですし」
はそう言うと、申し訳なさそうに笑う。
確かに、がつけた鬱血痕の方が、動揺させるには効果的だろう、と半助は考えた。
乱太郎までいたせいで爆発的な効果になったのは、さすが『不運委員長』といったところか。
治療も、鬱血の説明が終わり、はそそくさと服を着る。
もったいなさより落ち着かなさが勝っていた半助は、ホッと安心して視線をに落ち着かせた。
「お茶でもいれようか?」
汚れた包帯を片付け始めたに、半助は声をかける。
すると、はニコリと笑った。
「土井先生、甘い物はお好きですか?」
「好きだよ」
半助が答え微笑み返すと、何故か一瞬動きを止めたは、すぐに自分の荷物から小さな包みを取り出した。
「干菓子なぞ、いかがですか?」
「いいねぇ」
二人は同時にクスッと笑みを交わした。