第4章 土井先生と同居人 の段
の傷は、まだ出血し、痛々しい。
だが、半助の目には毒の跡は薄く、命に別状はなさそうに見えた。
「傷が開いて中が見えるから、今日は素直に傷を見せたのか」
半助が傷を見ながら言うと、はコクリと頷いた。
「毒なのは斬られた瞬間わかったんです。すぐに自分で解毒と応急処置はしました。たいした毒じゃないのが幸いです。ただ自信が完璧あったわけじゃなかったんで・・・」
は脱いだ衣の間に忍ばせていた薬を半助にスッと差し出す。
先程伊作から受け取った物だと、半助にはすぐわかった。
「これで、あってます・・・よね?」
は半助を見上げて聞く。
半助は黙ってそれを受け取ると、傷をもう1度見て、薬を確認し、さらに傷を診た。
部屋に静かな時が流れる。
善法寺伊作が自分で傷を診たがった訳が、半助にはよくわかった。
明らかに痛み止めと解毒の色が濃い薬。それを欲しがるとなると、が負っている傷が普通の刀傷でないと、伊作ならすぐにわかったはずだ。
「新野先生じゃないから断言はしたくないが・・・」
半助はそう前置きした後でー
「あってると思うよ」
グイッ!
言うが早いか、傷口を容赦なく洗浄し始めた。
「うわっ、つぅ! 土井先生、待った! 心の準備がまだ・・・」
「黙って! よく、まぁこの傷で行動してたもんだ!」
いきなり手当てを始めた半助にが待ったをかけるが、半助は聞く耳持たず。
の行動が所々おかしく、また鈍かった理由はわかった。
半助は気付かなかった自分を責めながら、それを言わなかったに苛立ちながら傷を処置していく。
は、最初は抵抗するも、すぐに諦めて、なされるがままとなった。
半助は器用に処置を終え、新しい包帯をくるくると巻き付ける。
「新野先生が戻って来られたら、一応診てもらおう。それまでは、私が包帯を取り替えるから」
そう言うと、半助はギュッと包帯の端を縛った。
「土井先生・・・それ多分、次も私、自分じゃほどけない・・・」
文句を言おうとした。
だが・・・
「何か言ったかい?」
「いえ、何でもありません」
半助に有無も言わさぬ視線を向けられ、押し黙った。
綺麗に治された包帯を、半助は軽く撫でた。