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忍たま☆ちょっと変わった迷い人 の段

第4章 土井先生と同居人 の段


が衣を脱ぐ音が、カサカサと部屋に響く。

(ダメだ、部屋が静かだと気になる!)

半助は慌てて、視線を天に泳がせながら口を開いた。

「くんは、利吉くんと遊びに来てたわりに、この部屋には来たことなかったよね」

「ふふっ、そうですね」

当たり障りのない話題を口にすると、の笑い声が部屋に響いた。

「親子水入らずの邪魔しちゃ悪いかと。あまり見られたい光景でもないらしいですし」

そう言いながら、はクスクスと笑う。

利吉が学園を訪ねてくる度に、家に帰れと父に小言を言っているというのは聞いているらしい。

「学園に来た理由の1つが実はそれ狙いだったんですけど・・・」

は残念そうに呟いた。半助には見えないが、首少し左右に振っている。

「?」

意味がわからず半助が首を傾げたのを、は横目で見ながら、肩に手をやり・・・

「土井先生。先生に止めてもらった包帯、 なんか自分じゃ取れないみたいなんですけど・・・」

スッと半助を見上げた。

気配で『振り向いてヨシ』と感じとった半助は、ゆっくり振り返る。

そこには、結び目の位置か固さか、包帯を解けず苦慮するがいた。

包帯を苦無か何かで切ればもちろんほどけるのだが、半助がそこにいるならやってもらおうと思ったらしい。

は半助を見上げて、包帯を指差し、口を尖らせている。

意外に子供っぽい表情もするのを見て、半助は動揺を隠し、フーッと1つ息を吐いた。

「それじゃ、ちょっとごめんね」

半助はゆっくりに手を伸ばすと、肩の結び目に手をかけた。

変に意識してしまわぬように、途切れた話を再び口にする。

「学園に来た理由、聞いてもいいかな?」

シュルシュルと包帯をゆっくりほどきながら半助が聞くと、は時おり顔をしかめながらも笑みを浮かべる。

「ここにくれば、利吉に会えるかなーと思ったんです」

は普通に質問に答えないのだが、不意にから出た『利吉』の名に、半助は眉をひそめる。

だが、気にせず、は続けた。

「土井先生の家で少し話しましたけど、つい先日、私の庵を急遽引き払ったんです。それを利吉に伝えられてなくて」

困ったようには笑う。
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