第4章 土井先生と同居人 の段
医務室を後にした半助と『』は、真っ直ぐ教員長屋にやって来た。
「ここだよ、『』くん」
「お邪魔しまーす」
半助に促され、『』は足早に部屋に入る。
面倒くさがりと自負しながらも部屋の片隅で立ったままの『』。
「適当に座ってくつろいでくれていいよ」
障子を閉めながら半助が言うと、『』は笑って腰を下ろし、
「ありがとうございます」
ニコニコ笑って部屋を眺めながら、優雅に下手に正座をした。
それはさながら、キチンとした家の息女の振る舞いだった。
(・・・ん? 息女?)
半助はふと気付き、一緒に部屋に来た人物を見る。
先程までより少し襟を抜き、胸元を緩めている。
うなじから首の細さが、胸元からは僅かにサラシが覗き、正座する姿は膝がキチンと閉じられていた。
これは、初対面には男に見えないだろう。
つまり・・・
「えーっと・・・くん?」
半助は恐る恐るそう呼び掛ける。
すると、至極満足そうには微笑んだ。
「やっぱりさすがです、土井先生☆」
軽やかな声音で、は目を細め半助を見る。
「解かせて頂きますね☆」
そう言うと、の持つ空気から、完全に『』らしさが消えた。
部屋にいるのは、どう見ても女だ。
(それはそれでこっちが緊張するんだけどなぁ)
どうせなら男のフリをしてくれている方が意識しなくてすむのに、と半助は思ったのだが、は『』としての振る舞いをやめ、半助に女らしい笑顔を向けている。
「話を合わせてくれて助かりました」
「いや、構わないよ」
頭を下げるに、半助は困りながらも首を横に振って笑う。
そして、の前でなく、自分の傍らに持ってきた治療道具を下ろした。
治療を手伝うと言ったのは話を合わせた訳じゃなく本当にそうするつもりだ、という表れだ。
は苦笑し、心持ち半助から身体を隠しながら襟に手をかける。
「それじゃあ、ちょっと手伝ってもらえますか?」
今回は何故かアッサリと半助に手助けを求める#NAME1。
不思議に思ったが、半助はすぐさま頷いた。