第3章 保健委員会と手負い人 の段
「しかし、土井先生・・・」
『』の肩を持った半助だが、教師である半助のその言葉に対してもなお、伊作は躊躇いを口にする。
「やはり治療は・・・」
言いかけた伊作は、『』が再びチラリと肩を出そうとしているのに気付き、言葉を飲んだ。
そんな伊作を見て、『』は乱太郎を解放する。半助も『』から手を離した。
自由になった乱太郎は状況を掴めないまま、笑顔でニコリと『』に微笑む。
「さっきの赤い跡って大丈夫ですかー?」
ニコッ♪
純真無垢な笑顔が医務室を支配する。
伊作は凍りつき、半助は困り、さすがに悪いと思ったか『』も苦笑した。
乱太郎には答えないまま、『』は伊作を見た。
「どうだろう、善法寺伊作くん」
首を少し傾けながら笑い、『』は伊作に提案する。
「妥協案として、僕の治療を土井先生に手伝ってもらうというのはどうかな?」
傍らに立つ半助を指差し、『』はニコリと笑った。
突如指名された半助が一瞬反応するが、無視して『』は畳み掛ける。
「さっき見せた通り、僕は今、あまり忍たまくん達に身体を見せたくない。しかし、善法寺伊作くんとしては怪我人を放置出来ない。なので、僕は土井先生に手伝いをお願いする。土井先生なら、僕の成りを見て驚くこともないからね」
幸い、学園の留守居を学園長から仰せつかり、土井先生のお部屋に間借りする予定だし、と『』は付け加える。
伊作は、『』の言う『僕の成り』を、さっきの鬱血跡と解釈し、悩んだ後、首を縦に振る。
「わかりました、では、道具と薬を出しておきます。土井先生、お願い出来ますか?」
ため息とともにそう言い、伊作は半助に頭を下げる。
乱太郎がいなければ、伊作は引き下がらなかっただろうと半助は思う。
(それで乱太郎に案内させたのか?)
計算づくな『』の動きに、嘆息した。
伊作は薬を取りだし、『』に手渡す。受け取った物が何か、小さくて半助には見えないが、『』が頷いているから間違いはないらしい。
伊作は、用意を済ませ、乱太郎を促し医務室を出ようとした。
だが、『』は伊作を止め、道具を抱え上げた。