第3章 保健委員会と手負い人 の段
伊作が慌てるのを見て、『』はゆっくりとあらわにした腕をしまう。
上目遣いに緩慢な仕草。
それが計算させた動きである事を半助は見逃さなかったが、黙って様子を窺う事にした。
やがて、『』があらわにした腕をキチンとしまうのを確認してから、伊作は乱太郎の顔を覆う手を離す。
「あのー、伊作先輩、さっきのは一体・・・」
急に目を塞がれた意味がさっぱり分からない乱太郎ほ、再びハテナを浮かべた。
だが、伊作は誤魔化す様な笑いを浮かべたまま、言葉を濁す。
それを見た『』は、乱太郎の頭をまた撫で、
「実践で教えてあげてもいいけど、忍たま一年生に教えていいのかなぁ?☆」
と、チラリと伊作を見た。
それにさらに慌てた伊作は、『』に詰め寄る。
「教えなくていいです、『』さん!」
「えー、別に大した事しないよー、善法寺伊作くん、君が想像したことだけだって☆」
「それがダメなんです!」
怪我人とは思えない軽快さで乱太郎を抱え、室内を華麗に逃げ回る『』。
対し、慌てて追いかける伊作。
乱太郎は為されるがまま『』に抱えられ、半助は呆れたまま追いかけっこを見つめる。
一応、辺りの物を避けながらじゃれ合う一同・・・まぁ、じゃれ合っていると自覚があるのは『』だけだが。
このままだと、そのうち『忍術学園の不運委員長』にさらなる不運が見舞われそうだと思った半助は、比較的早く、横やりを入れる事にした。
組んだ腕をスッとほどき、『』の逃げる軌道上にむんずと手を伸ばす。
「ほえっ?」
どうやら予想していなかったらしい『』は、間抜けな声を出さして、首根っこを掴まれた。
「・・・土井先生ー、僕、猫じゃないです」
軽い身体があっさり捕まり、降参とばかりに両手を上げた。
「『』くんは怪我人だろう?」
「一応。でも、善法寺伊作くんが僕に薬くれないんですもん」
あっさりと人のせいにする『』。
乱太郎を人質とばかりにな抱き締める『』に、伊作は困ったような顔を見せる。
仕方なしに、半助はに手を貸す事にした。
「大丈夫、薬を渡してやりなさい」
半助が伊作に言った。