第3章 保健委員会と手負い人 の段
ちょうどその時だった。
「・・・何をやってるんだ、一体・・・」
廊下から呆れた様な、なんとも言えない声がした。
「あっ、土井先生!」
薬草の入った籠を部屋に下ろし伊作を手伝おうとしていた乱太郎が、声の主を振り返った。
『』は半助の気配に気付いていたらしく、顔だけ向けて、片手をヒラヒラ振っている。
もう片方の手は、伊作の胸ぐらを掴んだままだ。
引き寄せられた伊作は、一瞬赤い顔をしたものの、すぐに鋭い視線を『』に向ける。
なんだかよくわからない状況になっている室内を見て、半助は頭をかいた。
「・・・全く、何をやってるんだ」
そう言うと、半助は『』に近寄り、額を人差し指でピンっと弾く。
大したことはないだろうと思った『』は、避けずに受け止めたのだが、予想外の威力となったそれは、『』の額の真ん中に赤い跡を残した。
「いったーぃ、何すんですか、土井先生!」
『』は、思わず手を伸ばす離し、両手で額を押さえる。
それにより、伊作は解放された。だが、その視線は『』から離れない。
半助には、伊作が突然仕掛けられた行動のせいで固まっているのだと思った。だからー
「忍たまをからかうんじゃない、くん」
「からかってませんよ、薬ちょーだいって言っただけです☆」
半助は『』と軽口を叩き合う。
そんな二人を・・・いや、『』を見ながら、伊作は眉をひそめる。
乱太郎が近寄り伊作の顔を覗き込むと、その顔はいつになく険しい。
「伊作先輩、大丈夫ですか?」
「・・・あ、ああ。すまない、乱太郎・・・」
返事をしつつも、伊作は『』から目を逸らさない。
半助は『』に説教らしき事を続け、『』はさらりとかわし続ける。
その様をじっと見続けた伊作は、ゆっくりと声を発した。
「・・・『』さん」
平素の彼より低い声音。その声は、半助と『』の間にスッと通り抜ける。
同時に振り返る二人。だが、伊作は半助に目を向けず、見極める様に『』を見たまま言った。
「本当にアレがいるんですか?」
呟いた伊作に、『』はニヤリと口元を吊り上げた。