第3章 保健委員会と手負い人 の段
「さん、それ、結構ひどいんじゃないですか?」
伊作は、どこを怪我したと聞かず悟り、『』の肩を見ながら眉をしかめる。
言いながら、手は包帯や布や薬を次々取りだし、
「ちょうど用意していたので」
と、湯の入った桶を並べる。
テキパキ動く伊作に、『』は感心しながら壁から身を起こした。
「さすが、6年生ともなると大したもんだなぁ。僕、肩だとも刀傷だとも言わなかったよね?」
自分の望む様に揃っていく様に、『』は口元を緩める。
膝を曲げて包帯を取り『』が伊作を見ると、伊作は多少照れながらも、『』の手から包帯を取り返した。
「血の臭いからして、明らかに切創はあり。骨折なら『』さんは添え木くらいして来るだろうし、薬がいる怪我ならまぁこの辺りかと。僕がやります。包帯は返して下さいね」
伊作は、包帯を左手にとり、ひとまず横に避けた。
そして、服を脱がそうと、『』の胸元の袷(あわせ)に手を伸ばす。
だが、その手を『』はするりと避けて、伊作の耳元に唇を寄せた。
「自分で脱ぐから手を離してよ」
フッと息を吹きかけながら言う『』。
その仕草が唐突で、伊作はバッと身を離した。
その反応に、『』はニヤニヤ笑顔を浮かべる。
「『』さん!?」
「いやー、ごめんごめん。でも、今のは君が悪い」
そう言いながら、『』はわざとらしく袖口から手裏剣と苦無をちらつかせる。
「袷のすぐ下も何仕込んでるかわかんないでしょ、触ったら怪我するよー☆」
(本当は袷に手入れたくらいで怪我するような物騒なものは仕込んでないけどね)
『』は笑いながら内心そんな風に考えていたが、伊作には効果があったらしい。
一度引いた手は、なかなか再度伸ばされず、困ったように両手が宙を踊る。
『』は満足して並んだ道具達を眺め、そして伊作にチョイチョイと手招きした。
「あっ、はい」
伊作が頷くが早いかー
グイッ!
「ええっ!?」
伊作の胸元を掴んだ『』 は思い切り引き寄せる。
「ちょーだい☆」
そう言って、『』は伊作の耳元にボソッと何かを呟いた。