第3章 保健委員会と手負い人 の段
「ら、乱太郎! ちょっと待った!」
「くん! 何言ってるんだ!?」
きり丸は乱太郎を、半助はに慌てて詰め寄った。
「えっ、きり丸、どうかした?」
「何かまずいですか、土井先生?」
それぞれ詰め寄る二人に、乱太郎はキョトンと、は有無も言わせぬ笑顔で返す。
「どうかしたっていうか・・・」
「まずいも何も・・・」
きり丸と半助は互いにその先が続けられずに言葉を詰まらせる。
頭にハテナを浮かべる乱太郎に、『』は
「変な二人だねー☆」
と笑い、頭を撫でると、黒い笑顔を携え半助に畳み掛ける。
「土井先生。『僕』がくのたま長屋や山本シナ先生の部屋で寝たいって言ったら変態扱いですよ! 学園長先生のお立場的に、得体の知れぬ部外者には誰かつけないと問題でしょうし・・・『僕』も慣れない方といきなり一緒にされるより、土井先生がいいです!」
ことさらに『僕』を、『』を強調するは半助の両手を自分の両手でむんずと掴み、力を込めて握りしめる。
さして力が強い訳ではない、ただ、問答無用という意思が漂っている。
半助に迫る『』は、しっかりと半助の目を見据えて、キッパリ言い切った。
「今日からお世話になります!☆」
「くんー!?」
半助は身をのけぞらし気味にに叫ぶ。
学園長が何やら楽しそうに見ている事など気付かない。
大人達のやり取りを眺めてホワホワした笑顔を浮かべる乱太郎を見たきり丸は、保護者の焦り顔に同情した。
お世話になりますと言い切られ、もはや決定の流れになっている。
そう、そこに学園長のトドメの一言がついた。
「決まりじゃ! そうと決まれば早速、医務室で怪我の治療をしてきなさい!」
「わかりました、学園長先生!」
力強く『』は頷いた。そして、乱太郎の腕を掴み、
「乱太郎、案内よろしく! 利吉と何回か学園に来たけど、医務室の場所は知らない☆」
と乱太郎に微笑んだ。
「まかせて下さい。私、保健委員なんで!」
乱太郎は何も気にせず、『』の横に並んだ。
「「じゃあちょっと行ってきます!☆」」
呆然とする半助ときり丸を横目に、保健委員と手負い人は妙に元気に消えて行った。