第3章 保健委員会と手負い人 の段
「本当にすみませんでした。ちゃんと治療します。絶対逃げません」
平謝りがしばし続いた後、再びさっきと同じ様な台詞と共に涙を浮かべるに、半助はため息をついて手を離した。
嘘泣きに決まっている。わかっているのに、潤んだ瞳には勝てなかった。
「まったく・・・」
「「土井先生、ドンマイです」」
半助が肩を落とすと、忍たま二人がさっきと同じ様な励ましで近寄ってきた。
本人はまったく気にせず、肩をさする。
「本当に治療して下さい。悪化したじゃないですか、土井先生のせいで」
「避けられる速さで掴んだつもりだったんだけどね」
暗に、『最初から具合悪かったんだろ』と言いたげに、半助は皮肉を言う。
も、反論せず『むっ』と一声漏らした。
「土井先生のイジワル」
ささやかな反抗は可愛い物だった。は唇を突き出し、ソッポを向く。
「勝手に部外者を医務室にまで入れて、学園長先生に怒られても知りませんからね」
それはからしてみればささやかな反撃のつもりだった。
だが、それは、確実に合図になっていた。
そう、あの人物が現れるための。
その言葉に呼応するかのように。
カーッ カッカッカッカッ!!
高笑いが辺りにこだました。
半助&忍たまには聞きなれた声。
「「「学園長(先生)!!!」」」
一同が振り返ると、そこには背景を突き破る様にニョキッと身体を出して現れる人物、忍術学園 学園長 大川平次渦正の姿があった。
「学園長!」
もう一度半助が呼びかけると、学園長は
「うむっ」
と頷き、半助に語りだした。
「土井先生、学園の状況は聞いておるか?」
「乱太郎からなんとなくでしたら」
半助が頷くと、学園長は乱太郎をチラリと見てやはり頷く。
「そうか。土井先生に連絡出来なくて悪かった。人手が足りなくてのぅ」
「で、状況は?」
「ふむ。思った程たいした事はなかったんじゃが、近くの集落に被害が出ておる。出した応援は、そのまま3日程詰めて手伝う様に指示を出した」
「では、私もすぐに-」
「それにはおよばん」
自分も現場に向かうと言おうとした半助を、学園長が遮る。
「学園が手薄になるのはまずい。土井先生は学園の留守居を頼む」
「わかりました」
学園長の言葉に、半助は頷いた。