第3章 保健委員会と手負い人 の段
「小松田くんと追いかけっこしてる間に、木の枝にぶつかりました☆」
合流する前に布何枚かかましてきたんで表には染みてきてないですけど、今度こそ傷口開いてます、と事も無げに痛そうな事をいう。
それを聞いて、きり丸と乱太郎は
「「うえぇぇぇ」」
と顔をしかめる。
「どうしよう・・・新野先生は山田先生達と一緒に、山火事の怪我人の手当てに行っちゃったし」
乱太郎がそう言った瞬間、『』の目が鋭くなる。
「そうなの、乱太郎?」
「そうそう。それで薬草いっぱい持っていっちゃったから、学園の在庫足りなくなって、で善法寺先輩が補充作業してるってわけ」
私はそのお手伝いでーす、と乱太郎が言うと、『』がいい子いい子と頭を撫でる。
その表情からは怪我は窺えない。だが・・・
(これだけ血の匂いがするってことは、あんまりよくないよな・・・)
半助は長屋で見た傷を思い出した。
さほど大きくも深くもなさそうだったが、軽いとも決して言えない傷。
荒い処置のせいか、治りも遅そうだった。
それが開いたとなれば、やはりキチンと見てもらうべきだと、半助は思う。放っておくのは心配だった。
しかし、乱太郎の言葉によると、校医の新野先生は学園にいない。
(どうしたもんかな・・・)
半助は考えを巡らせる。
同じ様に視線を宙に向けて何やら考えていた『』は、半助に目を向け・・・二人の視線がバシッと交差した。
(あっ、目があった・・・土井先生って、背高いなー)
(やっぱりくん、女性だからそんなに背は高くないよな・・・って、こんな目で見てるから『恋慕』とか言われるんだ、私は!!)
羨ましそうに半助を見ると違い、半助は一人焦り『』から目を逸らす。
「そ、そういえばくん、小松田くんは撒いてきたのかい?」
誤魔化す様に半助は一緒に消えた事務員の行方を尋ねる。
するとは、首を横に振った。
「いえ、走ってる途中で小松田くん、トカゲを落としたんで、その隙に入門票書きました」
筆を走らせる真似を見せながら、は笑う。
「噛んでたのは野良トカゲだったみたいです。あれを捕獲してるのかと思ったのに・・・」
振り払えばよかった、とは笑った。