• テキストサイズ

忍たま☆ちょっと変わった迷い人 の段

第3章 保健委員会と手負い人 の段


「あっ、きり丸~♪」

半助をからかいながら歩くきり丸に、慣れ親しんだ声が聞こえる。

遠くから聞こえたその声は、持ち前の駿足ですぐ二人の元までやって来た。

1年は組の良い子、猪名寺乱太郎だ。

「おーっ、乱太郎!!」

「お帰りー、あっ、土井先生もお帰りなさい。バイト大変でした?」

乱太郎は半助に頭を下げた後、ニシシッと笑った。

(どいつもこいつも・・・)

半助は胃痛を感じて腹部を押さえる。

乱太郎は、水色に井桁模様のいつもの1年生の制服に身をつつんでいた。しかも、手にはかごを持って。

「乱太郎、何してんだ?」

「実は私、授業の始まる日を間違えちゃって、早く戻ってきちゃったんだ。そしたら、保健委員会会長の6年は組・善法寺伊作先輩が困っていらっしゃったからお手伝いを」

そう言って、乱太郎はかごを見せる。

中にはびっしりと草が摘み取られている。

「薬草が急にたくさんなくなったから、学園の敷地内で調達出来るもの、覚えてる範囲で片っ端から取ってきて、って先輩が」

相当の量がかごには入っている。

きり丸の目が銭になって輝き出した。

「うわーい、山盛りぃ♪」

「あげないからね、きりちゃ~ん・・・」

ウキウキとするきり丸からかごを遠ざけ苦笑する乱太郎。

半助は、そのあまりの量に驚く。

(何でこんなに・・・っていうか、1年生1人にこんな量採らせて、全部薬草か怪しいぞ・・・)

不審そうにかごを見る半助。あまりに量が多いため、上から覗いただけじゃ、とても底まで判別出来ない。

(担任としてはどうかと思うが・・・これ、大丈夫か?)

ジーっとかごを見ながら悩む半助。

すると、それに気付いたのか、乱太郎は胸を張ってこう言う。

「あっ、大丈夫ですよ、土井先生。後で善法寺先輩が全部確認してくれるって言ってましたから。使えない草で食べられる物は食堂のおばちゃんに天ぷらにしてもらうって」

「威張っていう事か・・・」

半助はガックリと肩を落とす。

(しかし、さすがは6年生。きちんとしてる。乱太郎達も6年生になる頃にはこうなるのか?・・・自信ないなぁって思うのは担任失格だよなー・・・)

力なく頭を左右に振った半助の肩を、左右からきり丸と乱太郎が叩く。

「「先生ドンマイ」」

「お前たちが言うなー!!」

学園に半助の怒鳴り声が響き渡った。
/ 83ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp