第3章 保健委員会と手負い人 の段
「行っちゃいましたね、土井先生」
「そうだな・・・追いかけるか」
走り去る二人は、学園の奥へ消えて行く。
普通に考えれば、フリーのプロ忍者『』たるが小松田に捕まることはないだろうが、入門票に並々ならぬ意気込みを見せる事務員はなかなか面倒くさい。
二人は焦らず走らず、のんびり歩きながらを探す事にした。
がいなくなったので、半助ときり丸、慣れた二人での道中になる。
(今がチャンス♪)
きり丸は思い立ち、ニヤリと笑い口を開いた。
「ところで土井先生」
「・・・ん? なんだ、きり丸?」
歩きながらニヤニヤと覗き込んできたきり丸に、嫌な予感を感じた半助は身構える。
そんな半助にグイッと近寄り、きり丸は囁いた。
「土井先生、あの人のこと好きなんですかー??♪」
「き、きり丸!?!?」
「いやー、どうなのかなーと思って」
「どうもこうも、女だと認識したばっかりでそんな・・・」
事務員(正しくは事務員に噛みついていた爬虫類)から逃げたの気配は近くにはない。
そうわかっていても、半助は慌てて辺りを見渡す。
そう、頭をよぎったのは、先程走り去ったその人に他ならなかったからだ。
キョロキョロと周りを探る半助。
それ見て、きり丸は確信した。
「土井先生・・・僕、『あの人』としか言ってませんよー。誰を思い浮かべたんですかー?」
きり丸はしてやったりと笑った。
(やられた!)
教師の癖に1年生の術にまんまと引っ掛かった自分に、半助は舌を打つ。
きり丸は嬉しそうに半助の足を肘でつく。
「ま、仕方ないですよ。あの人、結構美人ですもんね。このこのー、先生ったらすみにおけないんだからぁー♪」
最後の方はきり子ちゃんな口調で、きり丸は半助を突っつく。
(参ったなぁ・・・)
半助は頭を抱えた。
確かに、『あの人』と言われてを思い浮かべた事は間違いなかったからだ。
「相手が伝子さんみたいな人だったら僕も『ええー、うぇぇー!?』って言いますけどー」
きり丸は自分で言っておきながら顔をしかめた。
『伝子よーん♪』
半助の脳裏に、同僚の山田伝蔵の女装姿がポンッと姿をあらわす。
「それは勘弁してくれ」
項垂れた半助の横に、きり丸の笑い声が響いた。