第2章 団子茶屋と甘味好き の段
「「きり丸、何してるんだ?」」
と半助が問うと、きり丸は目を銭で輝かせ、『アヘアヘッ』と振り返った。
「こんな美味い団子、黙って見過ごすなんて出来ません。花見や祭りで売ったら大儲け!」
「「・・・だから?」」
「女将さんに、長期休暇に売り子のバイトさせてくれってお願いしてましたー!!」
「「いつの間にそんな事を!!?」」
ズコーっとよろけると半助。
「銭、銭ー!!♪」
目を銭にして上機嫌のきり丸。聞かなくても、話はうまくまとまったであろうことが見てとれる。
「いいんですか?」
半助が保護者として聞くと、老夫婦は揃って頷いた。
「人の多い所に持っていって売ってきてくれるって言うからねー、助かるよー」
「かまわん。いつ来れるか、いくつ売る自信があるか、先に都度連絡しなさい。いる分だけ多めに作っといてやろう」
ただし、売り切れよ、と老主人が年を押すと、きり丸は目を輝かせたまま拳を握りしめた。
「任せて下さい! この味なら絶対売れます!」
両目の銭はイキイキと輝いている。
抜け目なくたくましい商魂を発揮していたきり丸に、半助は次の休暇がまた潰れていくのを感じ頭を抱えた。
「大丈夫です、このお二人なら、バイト先として安心です、僕が保証します」
に検討違いの保証までされ、半助はさらに頭を抱える。
「そういう事じゃなくてー」
(くんは知らないんだ・・・きり丸が稼ぐためにどれだけやるかを!!)
半助の脳裏に、この休みの出来事が走馬灯の様に甦る。
敷き詰められたバイトを手伝わされ、夜も内職に明け暮れる。それこそ朝から晩までバイト三昧。
これがきり丸の学費の為というのでなければ、今すぐ断ってしまいたい。
そうは思うが、目の前で目を輝かせるきり丸は、誰にも止められない。それを半助はよく知っている。
「・・・よろしくお願いします」
半助は老夫婦に頭を下げた。
何の話をしていて何が気になっていたかを、全部きり丸に持っていかれてしまった半助。
シメシメとが笑う。
茶屋には、きり丸のイキイキとした笑い声が響く。
今日はとても平和だ。
たとえそこが忍者の集う怪しい茶屋で、立ち寄ったのがフリー忍者と忍術教師、忍たまであろうとも。
空が澄んだ青さで、眼下を見ていた。