第2章 団子茶屋と甘味好き の段
「そんなことより、おぬし、『あの件』じゃが・・・隠すのは止めたのか?」
ふと、老人はそう言ったチラリと半助ときり丸を見る。
『あの件』だけなら山のような心当たりはあるだが、半助ときり丸を見る視線でどの事かにあたりをつける。
「僕の性別って話なら、伏せなくても、その二人は知ってます・・・話したばっかですが☆」
が言う。
半助も頷いた。
だが、老人はー
「そんなことは見りゃわかる」
と首を横に振った。
半助は、先ほど釘をさされた『恋慕の情』という言葉を思い出し、喉の奥を詰まらせる。
老人は、そんな半助には『未熟な兄さんじゃの』とばかりの一瞥だけ返し、に続ける。
「その兄さんと童に限ってではない。仲間内で、おおっぴらにその事を話したか? 近頃訪ねてくる輩が揃いも揃って、『主がおなごじゃ』と盛り上がっておるぞ」
「はぁっ!? 言ってませんよ、そんな面倒くさいこと」
はパタパタと手を振り否定する。
そう言いながらも、しっかり次の団子に伸ばす。そして口にパクパク。
(これだけ団子食べてても、一応男仕草は崩れないんだな・・・)
器用に『甘味好き男子』の見た目は崩さぬ姿に半助は苦笑するが、老人はクスリともしない。
「ワシはお主がどこかしこでペラペラ喋ると思わんからすべて否定しておいたが・・・すでにそこの兄さん達にペラペラ喋とるしなぁ」
しわがれた深いため息が聞こえ、は頭を掻いた。半助も苦笑する。
「これは成り行き上です☆」
半助を指差し、コクコク頷く。
「ま、引き続き気を付けます☆」
そう言いながら、気にしていなさげには茶を口に含む。その時ーー
「ついでにお主、仁王立ちにも気ぃつけた方がええぞ」
「ブホッ!?!?!?」
老人の続けた言葉に、は飲んでいたお茶を全力で吹き出す。
「うわっ、大丈夫かくん!?」
「ゲホゲホ・・・」
慌てて背中をさする半助、むせる。
老人は、
「こっちは心当たりありげじゃな。真話か」
とニヤリと笑った。
むせるのをおさえる事しばらく。
やがて、は老人に焦った顔を向ける。
「その話をどこで・・・」
問うの額には汗が流れていた。