第2章 団子茶屋と甘味好き の段
(団子、団子☆)
(タダ、タダー☆)
目を輝かせて半助を振り返る二人。いつの間にかは肩の事なんか忘れて両手を前に組んで、二人揃って『おねだりポーズ』を取っている。
(断れる雰囲気じゃないだろ・・・)
半助は苦笑した。
「それじゃ、ちょっと休んで行こう」
答えてやると、すぐさま、
「よーっし、行こう、きり丸!!」
「了解っす、さん!!」
と、二人で走り出す。
(くんは絶対、茶屋に寄りたかっただけだな)
ケガなど気にさせない走りっぷりにひとまず安心する。
(しかし、変わった茶屋だな・・・今まで気にしたことなかった)
二人が向かった店を見て、半助は首を傾げる。
その店は、道を少し離れた、田んぼの畦道の真ん中の様な所に立っていた。
あたかも納屋かの様な位置佇まい。何度もこの辺りを通っている半助が一度も立ち寄ろうと思った事のない店だ。
(なんであんな変な場所に店を・・・)
かすかに見える旗には『団子』と書いてあるが、商売っ気があるとは言えない。
小さな店だ。
「おねーさーん、団子ちょーだーい」
たどり着いたは、奥に向かって呼び掛けた。すると奥からー
「はいはいよー」
お姉さんと呼ぶには妙齢の、白髪の女性が腰を曲げて現れる。
その女性は、『』を見るなり、目を輝かせた。
「あんれ、お兄ちゃん! 元気にしとったんかー? 最近見んから心配しとったんよー。おじいさん、おじいさーん」
訛りのある言葉でを歓迎すると、ニコニコ笑いながら、旦那を呼んだ。
(顔見知りか・・・)
半助は、やり取りを観察した。
(お兄ちゃんって呼んでるから、名前を名乗ったり女だと言ってるわけではなさそうだな。常連の子ってとこか?)
看板娘(?)と語り合う様子を見る限りはそう見えた。のだが・・・
「おーおー、最近見ん顔じゃなー」
奥から現れた『お爺さん』を見て、すぐに半助は考えを改めた。
(この人は・・・)
半助は、あまり腰の曲がっていない、それでも頭はしっかり白髪で結わえられている男性主人を見て、すぐに気がついた。
「・・・同業者です、土井先生」
耳元で、の声が響く。
離れてお婆さんに団子を頼んでいたはずのが、目配せし微笑んでいた。