第2章 団子茶屋と甘味好き の段
間もなく長期休暇も終わりを告げる。
(きり丸のバイトの手伝いだけで終わった気がする・・・)
学園へ帰る道すがら。半助は、ため息をつきながら、前を歩くきり丸を見る。
楽しそうに隣を見ながら歩くきり丸。
その横には、もう一人、旅の連れの姿があった。
(バイトだけじゃなく、くんを拾いもしたか)
半助は思い直した。
「さんはー」
きり丸がしきりと話しかけている。
そう、キリリと袴を穿いたその姿は、乾いた荷物の中から取り出した自前の『男装束』にすっかり身を包んだ『』の姿だった。
「こっちの方が、動くの楽です、という訳で僕はこの格好で行きますんで、呼び名には注意して下さいね☆」
飄々と笑いながらが釘をさしてきたのは、長屋を出る直前のこと。
(きり丸がどうなるかと思いきや・・・)
半助は教え子の対応力に驚いていた。
きり丸は、元来、不器用では決してない。
持てる素養に加え、圧倒的なアルバイト経験から、世間にも揉まれている。
応用・適用力はあるのだ。
長屋を出てから、ずっと『』と話しながら歩いているのだが、一度たりとも名を間違えていない。いや、それどころか、の事を女と扱う様な発言も、全くしていない。
完全にのことを『忍者のセンパイおにーさん』として扱っている。
(まぁ、もともと男と思って出会ってるんだから、こっちの方が自然に出来るかもしれないな)
はたして自分はそう巧くいくだろうか、と思いながら、半助はまたため息を吐いた。
一方、はというと・・・
(そういえば、そろそろあそこか・・・)
ふと思い出し、肩を押さえるマネをする。
「土井先生・・・ちょっと傷の具合が・・・休憩していいですか?」
言いながら、後ろを歩く半助を振り返った。
「えっ? ああ、いいけど・・・大丈夫かい?」
傷を見ようと近付く、が・・・
「心配いりませんよー、休めば治ります☆」
と、少し離れた所を指で指し示す。
そこには、何故か道を少し外れて旗を掲げる一件の茶屋。
「僕がご馳走しますんで、あそこで一服☆」
ウキウキと体を乗り出すと・・・
「ええっ、おごり!? タダ!?」
それ以上に身を乗り出すきり丸。息が合う二人の様だ。