• テキストサイズ

忍たま☆ちょっと変わった迷い人 の段

第1章 きり丸の拾い人 の段


「それで、倒れてる『利吉くんの友達』ってのは誰なんだ?」

走りながらでも口を開けるスピードに合わせながら、半助はきり丸に尋ねる。

すると、きり丸は荒れた息で、

「っ、さんだよ!!」

と答える。

(・・・くん・・・学園に何度か遊びに来てた男の子だな)

半助は、頭の中での事を思い起こした。

同僚の山田伝蔵の息子、山田利吉が父を訪ねて来る時に着いてきていた。

半助よりは年下、利吉よりは年上といったところか。

(2人で楽しそうにしてたから、確かに利吉くんの同僚っていうより友達って印象だったな)

利吉より小柄だったが、凄腕の忍者だと言っていた。

ただ、利吉曰く『仕事をやる気がトンとないフリー忍者』

本人曰く『仕事をトコトン選ぶフリー忍者』

だそうだ。つまり、比較的、暇な忍者らしい。

走っていく内、ふいにきり丸が足を止めた。

「土井先生、ここっ!!」

考えながら走っている内、目的の場所にたどり着いたらしい。

きり丸は端の茂みに向かって声をかけた。

「さん、連れてきたよ!!」

そう叫ぶきり丸を少し避けさせ、半助も茂みを覗き込む。

すると、右肩から血を流し、うつ向き加減の顔があった。

「くん、大丈夫か!?」

半助が呼びかけると、顔を上げた黒い瞳に驚きの色がうつる。

「えっ・・・土井先生?・・・なんで?」

心底驚いた顔で、はしっかりと口を開いた。

意識はある、はっきりしている。

その事実に安心し、半助は真っ先にあることを確認する。

「忍務中か? 追っ手は?」

短く聞くと、的確に答えは返ってきた。

「忍務は終わって休暇中。追っ手なし。怪我は・・・この間仕事中に負ったものが開いただけです」

男性にしては高めの声。耳に心地よいが、半助は何か違和感を感じた。だが、怪我人を放っておくのは得策ではない。

(考える前に運ぶべきだな)

半助ときり丸の服から、雨が滴り落ちる。

当然、はもっと水を纏っていた。

半助は膝をつき、を両手で抱え上げた。

「ええっ、土井先生!?」

が再度驚きの声を上げる。

「ちょっとごめんね」

半助は笑うと、きり丸を促し、家に走り出した。
/ 83ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp