第1章 きり丸の拾い人 の段
「ごめん、つい癖で!!」
何となく撫でたくなった、としか言いようがない。
撫でられる位で照れる年でもないだろうが、の反応から察するに、急に何かをされるのには至極弱いようだ、と半助は判断して、素直に謝った。
息を荒げる仕草が可愛らしい。
(演じるだけで『』に変わるから不思議だ)
半助は苦笑した。
「何笑ってるんですか、おかわりくらいじゃ許しませんよ」
暗に『おかわりくれ』と言っている。ゆっくりとはいえ、さすがにほとんど食事を平らげている。
しかし・・・
「ごめん、明日学園に出立するつもりだったから、食材あんまり置いてなくて・・・急にくん増えて3人分になったから、さっきの分しかないんだ」
半助もきり丸も、自分の分は既に平らげている。
空っぽの鍋を指差し、半助はもう一度、
「ごめんね」
と笑みを浮かべた。
(・・・そういえば、土井先生のご飯、最初から少なめだった?)
はふと思い起こす。
鍋に入れられた食材は、恐らく2人分しかなかったのだろう。
(優しい人だな)
半助の人となりに、申し訳なさと同時に温かくなる心を感じる。
ふとー
「あっ、じゃあ、さっき開いた大風呂敷の中にあった保存食食べちゃいましょう☆ もちろん、土井先生ときり丸もご一緒に☆」
ポンっと拳を打つと、は荷物を漁り始めた。
「やったー、いただきまーす♪」
きり丸は目を輝かせ、自ら一緒に荷を漁り行く。その様子は、さながら姉弟の様だ。
しばらく荷物をガサガサする達を置いて、半助は微笑みながら下げられる食器を片付ける。
「どうでもいいけど、何でこんなに荷物持ってるんですか? さん。結構重かったですけどー」
きり丸が保存食以外も物色しながら問うと、は苦々しげに眉を潜めた。
「隠れ家にしてた庵を引き払ったばかりなんだ。預けれる物は知人に預けてきたんだけど、預けられない物もいっぱいあって」
そういうと、は忍びの武具、変装用の小道具等を取り出した。
察するに、荷を預けた相手は一般人らしい。
「イヤって言ってた割に、変装用の道具、いっぱいだなぁ」
きり丸が指摘すると、はまた渋い顔をした。