第1章 きり丸の拾い人 の段
「お騒がせ致しました」
「いえいえ、こちらこそ」
「どうぞお構い無く」
、半助、きり丸は続けて言葉を交わした。
きり丸が、『全部脱いじゃえばー?』的爆弾投下をしてから、さらに一悶着あったが、最終的に、
・半助ときり丸は着替えを見ない
・包帯は外して全身はキチンと乾かす
・包帯は干す
・は半助の服を借り着替える
と落ち着き、は着替え、半助はの服の洗濯、きり丸は配膳と、それぞれの役目をこなした。
きり丸がのいた茂みに置いてあった大量の荷物をしっかり回収して帰ってきていたので、ついでにその荷もほどき乾かす。
そこまでしてようやく落ち着いた三人は、改めて膳を囲みながら挨拶を交わし出した。
「ご飯までよばれて恐縮です」
あっ、美味しい、と口にしながらが言うと、
「大したことは出来ないけど」
と半助が返す。
さっきまでは勢い任せで熱くなっていたが、双方落ち着いたのか、きり丸の目には若干よそよそしかった。
(まあ、気持ちはわからなくないけど)
きり丸がそう思うのは、の格好にある。
が半助に借りた寝間着は当然ながら大きかった。
胸元のさらしの包帯を外したは、袷(あわせ)をしっかりキツく閉じ、長い裾を無理やり帯で上げている。
ただ、結局生地が余ってくる分、締めきれない分だけ胸元は緩み、裾は引きづり気味になった。
今は座って膳をとっている為上半身しか見えないが、男物を着ていても充分女性に見える。
「ええっと・・・結局何て呼んだらいい?」
半助が困った様に聞くと、は少し悩んだ後こう名乗る。
「改めまして、と申します。として何度か学園でお会いしている通り、基本は男として活動しています。男の格好の時はと、女の格好の時はと呼んで下さい。っていうか、両方名乗った以上、そう呼ばないと相手にしませんので。あと・・・」
一旦言葉をくぎった後、はニヤリと笑い、こう言った。
「女に見えるのに忍び装束を着ている時や、明らかに様子のおかしい女装の時は、決して名を呼ばないで下さい。命の保証が出来かねます」
忍の見せる怪しさがそこにはあった。