I don't like you 〜耳をすませば〜
第2章 夏に始まる
ー星海sideー
体を起こすと、強烈なだるさと頭痛が私を襲った。
足元がふらつく。
母「星海。おはよ。」
母は私が休むことを許してくれないだろう。
いや。許してくれるわけが無い。
それを覚悟し、言ってみた。
星海「お母さん……頭痛いし、だるいんだけど。」
母「まさか、休みたいなんて言わないわよね?」
やっぱり。
母「甘ったれてんじゃないわよ!」
と、母はテーブルの上にあった朝食を私に投げつけた。
母「私がどんだけ苦労して育ててやったと思ってんの!?少しは立場をわきまえなさいよ!!
貴方、自分の成績をどう思ってんの!?
悪いと思わないの!?思ってないから休みたいのよね!?
そうよね!?」
母は私を思いっきり揺さぶりながら聞く。
母「私の育て方が悪かったのね。
そうよね。はぁ。」
ブツブツと何かを言い始める母。
もう慣れた。
星海「………ごめんなさい。
学校行くね。」
そういった瞬間、母の顔がぱっと明るくなった。
母「そうよね!!そう言ってくれるかと思ってたわ!
さすが、星海!!お母さんの理想よ!」
私は母の理想。
そうですよねー。やりたい放題ですもんねー。
母「星海にはね、礼儀正しくてお人形みたいに、優雅で可愛い子に育って欲しいの。
だから……
もう少し、お母さんに付き合ってね。」
嘘つけ。
永遠に離すわけがない。
私は母の理想。
娘ではなく、着せ替え人形のようなものだ。
時計を見ると、7時30分を回っていた。
私はだるい体を無理矢理動かし、家を出た。
星海「行ってきます。」
笑顔で。
ー聖司sideー
朝、家を出るとちょうど星海がいた。
伝えなきゃな。
イタリアに行くって。
月島にも伝えなきゃ。
って、俺何でこんな月島のことで頭がいっぱいなんだ?
聖司「星海おはよ。」
振り返った星海の顔は真っ赤だった。
星海「聖司、はよ。」
聖司「お前顔真っ赤だぞ!?
熱あるんじゃ……」
星海「あるよ。けど、行かなきゃ行けないの。」
この言葉の意味を理解したのは、2時間後だった。