第2章 こんにちは
ユースタス・キッドの船を前にしたキャプテンから指示は「戦闘態勢をとって警戒を緩めるな」。練りに練ってきた大きな作戦を目前に、できれば騒ぎは避けたいのだろう…決してこちらからは仕掛けてはならないとのお達しだった。相手の出方を見ていたが、あちらは新世界に踏み入れる直前。無駄な戦力を削りたくないのはお互い同じだったようで、このまま何もなく船がすれ違うものと思っていた。
ユースタスがシャチの連れてきた女に目を留め声をかけるまでは。
「おいそこの女…まさかミッチーの妹か」
「…違いない」
「本物かよ…」
「ただ顔が似てるだけとは思わねぇのかお前ら馬鹿だな」
「あ?顔が似てるだけなのか?」
「イイエ、ミッチーの妹です」
「本物だってよ」
「だからお前馬鹿だろ」
「んだと!!?」
そこを皮切りに、みるみる両船長の間に険悪な雰囲気が流れ始めるわ、後ろでシャチたちが「ウソだろあいつあの顔でスラムダンク読んでるのかよ」「ああいうやつこそバスケ部襲撃のシーンでボロ泣きすんだよばか」とかなんとか訳の分からない会話を繰り広げているわで酷い状況だ。一言言わせろ。この険悪な空気を読めバカ(シャチ)。
「おいミッチー妹、お前トラファルガーの仲間なのか?」
「こんな心の病に侵された奴の仲間なんてごめんで……っいた!!」
「こんなのこっちから願い下げだ」
「なら俺の船に乗れ手厚く歓迎するぜ」
「ごめんなさい生理的に無理です」
大将黄猿の驚くであろう速さで見事に申し出を断った女。生理的に…なんてユースタス相手によく言えたもんだ。ユースタスもユースタスで拒否されたことを大して気にする様子もなくただひたすらに仲間になれと勧誘していた。これはチャンスだ。このまま女の背中を押せばキャプテンが頭を悩ませていただろう女の処分が円滑に進む。そう思ってキャプテンに目配せをしたのだが、
「悪いなユースタス屋。ソレは俺の船に乗せる。」
「なんだと!?」
「どんなにいらねぇモンでもてめぇにやるのだけは気に入らねぇ。例えそれがカビたパンでも…だ」
「それ私がカビたパン同然の扱いになるんだけど!!」
「お前なんてカビたパン以下だ」
そういえばキャプテンは変なところで頑固な人だった。
【こんにちは、予想外】
こうして、俺たちハートの海賊団は奇妙な女を手に入れた。