第2章 こんにちは
「オレの名前はベポ!」
よろしくキリちゃん!とこちらに手を差し出した喋るシロクマ。この船に厄介になる上で色々とご遠慮したい条件ばかり思いついていたが、この目の前の天使がオプションとして付いてくると言われたらそんなものどうでもよく感じた。だってよく考えてみて私。トラ男の厨二加減とベポの可愛さを天秤にかけるんだ。それはもうベポの大勝利じゃないだろうか。DEATH刺青だっていいじゃない。ベポが可愛いだけで私の世界はこんなにも平和だ。
「ベポォオオオオオ!!!!」
タックル同然の抱擁を彼に施すが、その大きな体は少しも動じることなく、むしろ満面の笑みで頬をすり寄せてくれた。何この圧倒的包容力による癒し効果。私ベポと結婚しよう。そうしよう。
「シャチ見て!オレキリちゃんとギュッてしてるよ!」
「なんだそれ羨ましい!キリちゃんオレにもギュッてしてぇええええ!!」
「そうですね、私はベポと結婚するので嫌です!」
「うわあぁあああくそ!!オレベポになりてぇええ!!」
キャスケット帽子が床をドンドン叩きながら悲痛な叫びをあげているが、ベポの抱き心地を前にしては心底どうでもいい。更に言えばベポに抱きついていない時だってどうでもいい。
勝者だけが正義?違うだろ。
ベポこそ正義だ。
【愛しのシロクマ】