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ヘタレとハートの愉快な仲間達

第2章 こんにちは




海軍の追跡を逃れて一息ついていると、シャチが何故か船長室に閉じ込めておいたはずの女を甲板へと連れてきていた。クルーたちは口々にいつの間に女が乗り込んできたのかだの『なんとかに』出てくる『誰それ』に似てるだの呟いていて、いよいよ面倒だ。出来れば誰にも知られることなく女を処分したかったのだが、この状況ではどうもそれは難しい。目の前でひたすら挙動不審を極める女に頭を抱えるしかなくなってきた。

この海には空想上の生き物かと思っていたものが当たり前のように存在することもありはするが、架空の人物となれば話は別だ。だからと言って、シャチが嘘をつく可能性、必要性すらない。恐らく、たまたま顔の似た女を何か色々と道を踏み外して誘拐してきたのだろう。まぁ、海賊である時点で道を踏み外していることに変わりはないのだが。



「あの…」

俺の表情を伺いながら話すタイミングや言葉を吟味している辺り、先程まで生意気だったこの女もどうやら馬鹿では無いらしい。顎をしゃくって話してもかまわないことを合図すると、おもむろに女が口を開けた。

「海に沈められるとか、は…ないですよね?」
「…さぁ、どうだろうな」

僅かながらに口角を上げて女に冷笑をおくると、みるみるその血色を失っていった。実際の所ここまで誘拐してしまった以上元の島に戻すことは難しい。かと言って新しいクルーとして迎え入れるほど信用してないし、使えそうだとも思えない。当人の言う通り海に沈めるのが一番手っ取り早く後腐れもなかった。こいつがただの女ならば造作もないことだったのだ。
だが、早くもシャチと同じような輩がこの架空の人物に好感を持ち始めているということが事態を複雑にしている。クルーの意見に振り回されるつもりなどさらさらないが、これから待ち受けるドフラミンゴを討つための作戦を前にクルーの信用を少しでも損なうような行動は後々俺自身に不都合が生じる。部下を捨て駒のように扱うつもりもない。



「キャプテン!」
「…なんだ」

女の処遇を決めかねていると、見張りをしていたペンギンが声を張り上げた。ユースタス屋の船が近くを通るのだという報告に加え、指示を扇がれる。舌打ちをしながら刀とって再び戦闘態勢に入るように呼びかけた。


今日はどうにも面倒が多いらしい。




【こんにちは、厄介事】

この女が運ぶのは、果たして厄か、吉か



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