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名の無い関係

第18章 問題は山積み


どうせまた、足の踏み場がない程に汚れているだろうと思っていたが全く違って驚いてしまった。
別の部屋に入ってしまったかと思う程にきちんと片付けられ、掃除も行き渡っている。


『最近はヒマでね。ま、おかげで掃除も出来るのよ。』


驚いた?なんて言ってアゲハは笑う。
よく見ると以前はなかった彼女の好みとは思えない派手な装飾の施された小物入れや、いかにも女が喜びそうな飾り物が増えている。
所在が全くわからなかったのは、どうやら彼女がここにすらいなかったかららしい。


「で、要件はなんだ。」

『今から私と買物に行きます。』

「はぁ?」

『なのでさっさとシャワーして、私服に着替えて。』


詳しい話は移動中にするから、とシャワー室に押し込められた。
ここも以前に借りた時とは違い、女らしい飾り物や色合いの小物で溢れている。
だが、どれもこれもバラバラで統一感が無いところをみると部屋の物と同じ様に彼女が選んだものではないだろう。


「…似合わねぇな。」


一つ一つは確かにいい物なのだろうが、彼女が持つには似合わないものばかり。
もし自分だったらこんな物は贈らない、そう考えてしまっていた事に無性に腹が立った。
込み上げた苛立ちをそのままに、命令だと言われては無碍にも出来ずシャワーに打たれる。
これはある意味、自分にとっても都合がいい。他者の邪魔が入らない所で、本人に直接聞けるチャンスだ。
偶然聞いてしまったエルヴィンとアゲハの会話。
それはまるで、今、調査兵団に自分がいることが全て仕組まれたことの様に聞こえた。そして、そうする為に大事な仲間が命を落とした。
一度は自分の中で決着した事だが、確かめずにはいられない。
もし、本当にそうだとしても何が変わることはないだろう。
調査兵団に入ると決め、今はここで巨人と戦うと決めた。
それは紛れも無い、自分の意思だ。


『まだー?』


はやくしないとお店閉まっちゃうよ、とアゲハがドアの外で催促してきた。


「あぁ、もう出る。」


シャワー止め、タオルで身体を拭い急いでシャツに腕を通す。
まだ髪は完全に乾いてはいないが、ドアを開けた。
そこには一見、とても兵士には見えない、普通の女が立っていた。


『よし、じゃあ行こうか。』


彼女はどこか楽しそうにそう言った。
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