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名の無い関係

第18章 問題は山積み


『ピクシス司令は面白い人だと思う、学ぶべき所も多いよ。けど、それ以外は今後の為になってくとは思えない。それにこんな事を今までエルヴィン一人にやらせてたなんて考えると…。』


エルヴィンはそっと席を立ち、また外へと視線を向けてしまったアゲハを包み込む様に抱き締めた。
いつもならば甘えてくるだろうに、今回はただされるがまま。
彼女からの反応が全くない。


「…ありがとう。君のそんな所が私を救ってくれる。」


彼女だけに届く様に、耳元でそっとエルヴィンは呟いた。
ピクっと小さく身体を震わせたアゲハの頬がみるみる赤く染まっていく。


『エルヴィンはズルい。』

「そうだ、私はズルい男なんだ。」


だからこの先、どんな好条件を出されたとしても調査兵団から君を手放す気はない、はっきりとそう言い切ったエルヴィンは抱きしめる腕に力を込めた。


『…本当にエルヴィンはズルいよ。』


そんな所が好きだ。
愛しているから手放したくない。
そう言ってしまったら嘘になってしまうだろう、嘘で繋ぎとめられてもただ悲しくなるだけだ。
そんな仮初めの言葉では自分の命を預けるには安すぎる。


「知らなかったのか?」

『知ってる。すご〜く知ってるよ。』


アゲハはそう言うとやっと笑顔を浮かべた。
どうやら機嫌が少し治ったらしい。


「そんなズルい私から次の仕事を頼みたいんだ。」


そっと彼女から離れデスクから一枚の書類を手に取ると、それと一緒にそれなりの金額が入った封筒を手にする。


『なに?』

「そう難しい仕事じゃないさ。」


先に渡された書類に目を落としたアゲハは、百面相している。
ランスロット伯爵の婚礼を知らせる内容は、もうあの小太り男に言い寄られずに済むと喜んだが、婚礼後の披露宴に招待すると言う文字があったのだ。
更にそこには予てより交流のあったエルヴィンとアゲハだけではなく、噂の人類最強の兵士も招待したいと書かれていたのだ。


「来月の披露宴に間に合うよう、リヴァイにそれなりの服装を用意してやってくれ。」


彼女からの返事を待たずにエルヴィンは金の入った封筒を渡した。
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