• テキストサイズ

名の無い関係

第15章 決断と結果


扉が開かれる鐘が鳴り響く。
仲間を失い、自らも怪我を負い、心身共に疲弊しきっていた。
しかし、第三分隊の任務はまだ終わらない。
絶対に壁内に巨人を侵入させない為に最後の最後まで戦う。


『一、二班は私と一緒に!他は本隊に並走してこっちが取りこぼした奴の足止め!』


壁が目視できる場所に来たがまだ巨人は見えない、このままならば直接戦闘はせずに帰還できそうだ。
馬の速度を落として本隊から距離を取ったアゲハは、壁上砲台を見る。
あれが使われるのは自分達が扉を抜ける頃だ。


「隊長!巨人です!!」

『一班は私と!二班はこのまま索敵しつつ帰還を最優先!』


二班の班長はリヴァイ。
アゲハの指示にあからさまに不満だという顔をしたが、見なかった事にした。
自分を含めた六でこちらに向かってくる七メートルクラスの巨人へ向かう。
無駄に手足の長い、人間だったらかなり身体のバランスが悪そうな男っぽい巨人は、何が楽しいのかヘラヘラと笑ってこちらに向かって来た。
周囲にアンカーを打ち込める様な場所はない。
最初にアンカーを撃って馬上から舞い上がったのはアゲハだった。


「隊長!!」


巨人の顔面。
彼女の撃ったアンカーは巨人の右目に命中したのだ。
まるで小さな虫を追い払うかの様に、巨人は足を止めて手を振り回す。
長い手は鞭のようにしなっていたが、顔の前を動かすだけで後方から頸を狙うには絶好のチャンスだ。


「死ねぇ!!!」


流石は戦闘特化の第三分隊。
見事に一撃で頸を削いだ。


『さあ、急いで戻ろう!』

「全く、無茶はやめて下さいよ。」


遺体が蒸気に変わる中から、ケロッと戻って来たアゲハに他の兵が心底安心した顔をした。
馬を呼び戻し、急いで本隊の後を追う。
扉を無事に通り抜け、重く大きなそれが閉まるのを確認するとアゲハは馬を降りた。
シガンシナ区を通り、マリアの壁を抜け、トロスト区を通りローゼの壁を越えやっと調査兵団本拠地にたどり着くまではまだまだ時間がかかる。
街中を通る時は馬も休ませてやりたい、というのがアゲハの考えだ。
前方の方が何やら騒がしいが、調査兵団の帰還を喜んでくれる人の方が少ない。きっとまた、いつものようにパッシングを受けているのだろう。


「重症者はひとまずシガンシナの診療所へ運べ。」
/ 130ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp