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名の無い関係

第15章 決断と結果


『なぁーにしてるの!』


ほら、おいで!と掴まれた手が熱い。
いや、自分のそれが冷えていたのかもしれない。


『全く!水浴びがしたいならせめて服は脱ぎなさいよ。』


屋根の下に引っ張り戻され頭にタオルを乗せられた。
いつもなら突き返すところだが、何故か動けない。
ワサワサと髪を乱暴に拭かれているのに抵抗する気が全くわかない。


『…泣きたいなら我慢しなくていいのに。誰も笑ったりしないし、その理由も聞いたりしない。』

「泣く?」


ポタポタと滴り落ちていたのは雨だと思っていた。


『ほら、髪は拭いてあげたんだから。服は自分で乾かしなさい。』


アゲハはそう言うとバシっと俺の背を叩いた。
古い暖炉の中に真っ赤な火。
ブーツの中まで雨が入り込みぐっしょりと濡れてしまっていた。
そんなに長い時間、あそこにいたつもりはなかった。
ただ、あの日の事を思い出してしまっただけ。
ここは二人と過ごした最後の場所。
偶然か必然か、二人と永遠の別れを迎えた時と同じ様な雨。
ただ思い出していただけだった。


「…俺は泣いていたのか?」

『さぁ?後姿だったし、兎に角!今はそのびしょ濡れをなんとかしなさい、風邪引くよ?』


なんだか頭がボーッとする。
まだなにか喧しくしゃべっているようなアゲハの声が遠くに聞こえる。視界が歪んで上下がわからなくなる。


『ちょリヴァイ?!』


歪む世界の中でアゲハがこちらに手を伸ばしているのがなんとなく見えて、それに自分も手を伸ばした。


「参ったな。」

『ここ、リヴァイにとっては辛い場所なんでしょ?』

「だろうな。」

『なら尚更、はやく雨がやんでくれなきゃ困るね。』

「そうだな、しかし…。」


この調子では早くても朝まではここにいるしかないだろう、とエルヴィンは外を見ながら言った。
一時的な嵐かと思っていたが、真っ黒な雲は切れ間なく続いている。風は弱くなってきたが、そのせいで雨雲の動きは遅くなってしまっている。
このままでは予定していた満月の夜はこの雲の向こう側。夜間移動も難しくなるばかりだ。
更に戦力の一人がこの様。


「濡れたままでは体温が奪われるだけだな。」

『脱がして添い寝でもしてあげたら?』

「脱がすのは構わないが、添い寝役は君が適任だと思うが?」
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