第14章 最強争奪戦
次の調査計画書とそれに伴う陣形図。補給物資や持ち出し量の資料。キース団長の焦りの様な物がそこからは感じられる。
けれどエルヴィンがそれに反対していないのだから、自分はただ従うのみだ。
最後の補給地に到着するのが昼過ぎ、そこで隊を分ける手筈になっている。
補給地の防衛、未開の地への進撃。
その両方を同時展開するにはかなりの人数で出る事になりそうだ。
何十枚もの資料には細かい文字がびっしりと書かれている。
過去の調査で作られてきている壁外地図。
そのまだ書かれていない部分にはどんな結果が書き足されるのだろうか。
一人、執務室で膨大な資料を相手にしていたアゲハ。
今頃はキース団長とエルヴィンが最終打ち合わせをしているはずだ。
総勢五百弱の調査兵団兵士の九割が今回は壁外調査に出る事になる。
ミケ、ハンジ、そして自分の他に2名。新たに隊長が任命された。
そこにまだリヴァイの名がない事に、そして彼の名が自分の隊にある事に安心してしまう。
「入るぞ。」
『どうぞ。』
タイミングよく、今まさに考えていた人物がトレーを手にドアを開けた。
以前はよく、こんな風に軽食を届けてくれていたが最近は全くなかった。
だからだろう、無性にそれが美味しそうに思える。
『やった!スコーン!!』
「終わってんのか、それ。」
まだデスクにトレーを置かず、広げていた資料に視線が向けられた。
『あぁ、うん。まぁ、一応?』
「一応?」
『いや、終わり!』
そう言うと早く食べたい!と訴える。
「食うのはかまわないが、こっちでにしとけ。」
リヴァイはそう言うと、ソファーの方にトレーを置いた。
小動物のようにスコーンを囓る。
余程腹を空かせていたのか、ポロポロとこぼす事も気にせず。
全くだらしない。
慌てて食べて苦しそうにカップに手を伸ばしては紅茶でそれを流し込むを何度も繰り返している。
まるでガキだ。
自分の正面に座るコイツは、格好は自分と同じ兵士だ。
けれど小柄でガキでだらし無い。そして「女」なのだ。
『…ほへで?なんしにきはほ?』
「食いながら話すな。」
汚ぇなと言いながらも、ナプキンを差し出すあたりしっかりアゲハの扱い方に慣れている。
ゴクゴクと紅茶で口の中の物を流し込み満足気な表情を浮かべた。
『で、何か用事?』