第14章 最強争奪戦
『なに?なんなのよ?!』
まるでアゲハが手を抜いたと言っているみたいだ。
確かにアゲハの訓練は他の隊に比べればきつくつらいものではない、むしろ、楽なぐらいだ。けれどそれは一人一人をしっかり見ているからこそ、それぞれに合った、それぞれに必要な訓練しかさせないからだ。
決して手を抜いているわけではない。
他から見ると緩い、優しい、なんて言われる事が多いが結果、それが彼女の部下の生存率を上げている。
出来ない事を無理にやらせず、出来る事を完璧にこなせるようにする、それが彼女の指導方針。
「アンタにとってはその程度のことなのか。」
『だからなんのことを言ってるの?』
リヴァイがどんどん苛立っていく。
それに対してアゲハも表情を変える。
『私はいつでも手を抜く様な事はしない!!』
「嘘つくんじゃねぇ!」
このままでは隊長と班長が本気でやり合うのではないか、と他の兵達があたふたし始める。
二人が喧嘩をするのは珍しい事ではないが、今日のはいつものそれとは明らかに違う。
『…なにが不満なのか知らないけど、個人的な事が原因なら後にしなさい。』
隊長としての顔をしたアゲハはそう言うと近くの枝に降り、自分の馬を指笛で呼び戻した。