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名の無い関係

第6章 シェイクアウト


季節は秋に変わったが、真夏の様な突き刺さる様な日差しが降り注ぐ。
大きな木に寄り掛かり、僅かに出来た日陰の中で読者をしていたエルヴィンと彼に寄り掛かりウトウトしている小さな人影。
見慣れた隊服ではなく、ラフな私服。
だが、二人がいるのは兵団敷地内の訓練場。
この暑さの中で訓練は無駄に体力を消費するだけだと、日中はどの分隊も休息とし夕方から夜間に行うこととなった。
壁外に出たら昼も夜も関係ない。
むしろ夜間は巨人の活動が鈍くなる事から、危険度の高い場所の調査は夜間帯に行う方がいいのではないかとの案もある。
今は負傷した兵達が回復するのを待ちながら、色々な意見や提案を過去の調査の結果や成果と合わせ、今後のやり方を見直す時だとエルヴィンは考えていた。
索敵に重点を置き、多少遠回りする事になっても巨人との遭遇、戦闘を極力避ける進軍方法もその一つだ。


『…あっぷるぱい…』


視線は書物に向けたまま、そっと体を動かし寄り掛かりやすい様に体勢を変える。
きっと夢の中でそれを食べているのだろうアゲハの表情がだらし無く緩んでいた。
たくさんの仲間、部下の犠牲があったばかりなのにと言われてしまうかもしれないが、だからこそ、二人はこうして過ごせる時間を無駄にはしない。
自分の為にだけ使える僅かな時間。
そしてそれをわかっているから邪魔をする者はいない、はずだった。


「アホ丸出しの顔しやがって。」

「アップルパイを食べているみたいだからな。」


静かに本を閉じたエルヴィンは自分に寄り掛かりすっかり寝入っているアゲハを見て珍しく本心からの笑みを浮かべる。
まるで恋人を愛おしむような、愛娘を甘やかすような、そんな顔だ。
それを見たリヴァイの眉間に皺が増える。


「…それで、何の用だ?」

「あぁ?」

「何か用があったから来たのだろう?」


訓練場の中とはいえ、立体起動なしでここまで来るには数十分は歩く事になる。
それをわざわざ来たのだから、偶然のはずがない。


「彼女に用事だったか?」


なかなか言い出さないリヴァイを冷やかすようにエルヴィンは言った。


「いや、お前にだ。」

「なら話せばいい。」


ここなら誰かに聞かれてはまずい話でも出来るだろう。
だが、一番聞かれたくない相手がいる。


「なるほど。アゲハが邪魔な話か。」
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