第24章 秋の夜長
力なくそう兵達に告げると、心配そうに近付いてきた愛馬の頭を撫でながらアゲハはトボトボと去ってしまった。
「勝手な奴め。」
そう零したリヴァイは笑っていた。
現場復帰の祝いだ、とエルヴィンに兵舎外のレストランに食事に誘われたはいいがアゲハはそれにあまり手を付けない。
久々の実戦訓練で疲れているのかと思ったが、どうやらそれだけでは無いらしい。
『エルヴィン、私太ったかな?』
グラスワインを思わず吹き出しそうになったエルヴィンは、真剣な顔で返事を待つ彼女になんと答えるのが正解なのかと考える。
確かに最近、抱き心地がいいと感じていた。
けれどそれは彼女の身体そのものがより女性として成熟したからであり、太ったのかもしれないとは考えてもいなかった。
「どうしたんだ、急に。」
『リヴァイに言われたの。』
確かに筋力は落ちてるとは思うんだけどね、と食べたいが我慢しているのだろう。
皿に残ったイチゴをホークに刺したはいいが口に運べずに持て余している。
たかがイチゴを一粒食べたぐらいで何が変わると言うこともないだろうに、と思いながらもそれは口にしない。
「それに関しては私にも非があるな。ずっと君には中仕事ばかりを頼んでいたからね。」
王都に行けば嫌でも豪華な食事を食べさせられる。
『はぁ…。ちょっと怠け過ぎたかな。』
「それならちょうどいい。訓練兵団に出張に行ってもらいたいんだ。」
キース団長が今は訓練兵団の団長をしている。
その関係で調査兵団の現役兵士から何人か、臨時指導に来て欲しいと頼まれていたのだ。
実際に巨人を相手にした事のある者から教わる方がいいに決まっている、と。
それにこれは次の春には卒団する新兵の下見も兼ねている。
「キース団長も君なら…。」
『私、あの方から嫌われてるけど大丈夫かな。』
いくら巨人に詳しいといえど、ハンジを寄越すのは勘弁してくれと言われてはいたがアゲハについては何も言っていなかった。
それに実戦訓練をするならば、ただただ厳しいあの人とは対極にいるようなアゲハの方が刺激になるだろう。
「何人か連れて行くといい。」
『そうだね、誰がいいかな。』