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名の無い関係

第24章 秋の夜長


日程は三泊四日。
通常訓練を離れ、訓練兵達と寝食をともにする事も初心を忘れない為にはいい事だ。
だから自分の直下の部下を何人か同行させなさい、とエルヴィンは言った。


「君との旅行のようで妬けるがね。」

『ならエルヴィンが直々に行く?』

「君との旅行まで、それは待つ事にするよ。」


いつか巨人達から領土を取り戻したら、この大地の果てまで行ってこよう。エルヴィンはそう言うと優しく微笑んだ。


『そうだね、いつか『海』ってのを見に行きたいね。』


アゲハはそう言うとやっとイチゴを頬張った。
その後はたわいも無い会話をして、店を出た。
通りを行き交う人は少なく、灯りもまばらだ。明日が非番ならばこのままもう一件、アルコールが飲める店に寄って行きたい所だが、エルヴィンもアゲハもしっかり朝から任務がある。
特に何かを話すわけでもなく、けれどアゲハは楽しそうにエルヴィンの隣を歩く。
兵舎の前には見張りの兵が立っており、二人に気がつくとピシッと姿勢を正し敬礼をした。


『ご苦労様。』


どうやら相当アゲハは機嫌がいいらしい。
堂々と前を通っただけのエルヴィンとは違い、ニコニコと微笑み手まで降った。そのままスキップでもしそうな勢いだ。
恋人というよりも、父親との外出にはしゃぐ娘の姿が近い。


「このまま戻るかい?」

『お邪魔じゃ無い?』

「君ならいつでも邪魔にはならないさ。」


さり気ないこの後のお誘いに、アゲハは一度自分の部屋に戻り着替えたらエルヴィンの部屋に行くと答えた。
一旦別れ自分の部屋に向かったアゲハは、ドアノブに手を伸ばしだところで室内に人の気配を感じそれを開ける事を躊躇う。
そこは間違いなく自分の私室だが、施錠していたわけではない。
侵入者がいる事は間違いないが、アゲハは特別慌てる様子も怯える様子もなく、トントンとノックをしてからドアを開けた。


『ただいま!』


しかし、侵入者の姿はなく代わりにシャワーを浴びている水音が聞こえた。
バスタオルを出しておいてあげようとクローゼットに真っ直ぐに向かう。


『リヴァイ、タオル置いとくよ。』


アゲハはそう声をかけて部屋を出て行った。
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