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名の無い関係

第21章 ワルツ


「これを付けたら俺達も上官と部下ではなくなるな。」


エルヴィンはそう言うと仮面を付けた。
ホストであるランスロット伯爵の方が今夜は挨拶回りをしていた。
その隣には奥方様だろう、小柄な女性が色とりどりの羽根で作られた仮面を付けて立っている。
少し明るさが抑えられており、確かにこの場では近付いて話さない限り相手が誰なのかわかりにくい。


「見て!ヨハン様よ!」


だが、普段から夜会で顔を合わせる事の多い者たちにとっては無意味らしい。
会場に入ってきた男性を見た女性陣から黄色い声が聞こえきた。
ヨハンと言えばランスロット伯爵の幼馴染だと紹介された人物。
昨夜は興味深い様子でこちら(調査兵団)の話を聞いてきた男だ。


「あのお方はどなたかしら。」

「素敵な装いね、ヨハン様の恋人かしら。」

「羨ましいですわね。」


ワイングラスを手に、何気なくそっちを見た。
ギラギラに飾られた仮面を付けた男にエスコートされていたのは、まだ若い女性。
今夜が社交界デビューなのかもしれない。
何処と無く歩き方がぎこちない感じがあり、緊張しているのだろう。
体のラインがわかりやすいドレスは腰の下あたりギリギリまで深くスリットが入っていて、とても魅力的だ。


「ヨハン!そちらは?」

「おや、ランスロット。わからないか?」


何やら楽しげに貴族同士で話している。
この分ならばリヴァイではないが、今夜は予定よりも早くこの場を去る事が出来そうだ。
一通り挨拶は済んでいることだ、このまま二、三曲、どこかのご婦人方とダンスをしたら切り上げよう。
相変わらず壁の飾りになっているリヴァイにも、かなり注目が集まってしまっている。
昨日の事もあり、ご婦人方の興味はより一層だろう。


「威嚇しているみたいに見えるぞ。」

「してんだよ、鬱陶しくて仕方ねぇ。」


飲むか?とグラスを渡すとグビグビとそれを飲み干す。
まるで行儀作法のなってない飲み方だが、今夜はそれも許される。
給仕をしている人達も皆、しっかり仮面をつけており、リヴァイが空けたグラスをタイミングよく受け取りに来た。


「お前も踊ったらどうだ?」

「バカ言え。俺がそんな事できると思ってんのか?」

「出来るだろ?」


はっきり否定してこないあたり、多少は嗜みがあるのだろう。
ムード音楽として演奏されていた曲が終わる。
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