• テキストサイズ

名の無い関係

第20章 星空と月


「貴方も外に行ったことがおありなんでしょう?」

『はい、ウォール・マリアの外にも行っております。』

「外はどのような所ですか?」

『とても広く、とても美しいです。しかし、地獄の様な所でもあります。』


立ち話もなんだから、と近くにあったガゼボに行こうとシャルロット様は言った。
お断りするには理由が思いつかず、それならばとアゲハは紳士的に彼女をエスコートする。
ベンチに腰を下ろして、夜の庭園を前に次々にぶつけられるシャルロット様の質問に答えていた。
出来るだけ刺激の少ない表現で、これまでに自分が見た事、体験した事を話す。
まるで子供が御伽噺を聞いているかの様に、驚いたり笑ったり、悲しんだり喜んだり。


「とても信じられないお話ばかりですわ。」

『仕方がない事です。わ、…!僕も最初はそうでしたから。』

「そうだわ!今度はそのりったいきどう、というのを見せて頂けないかしら。」


空を飛べると言ったのは間違いだったかもしれない。


『構いませんよ。機会があればぜひ。』


これはエルヴィンの常套句。
二度目の機会が無いとわかっているからこその言葉だ。


「約束して下さいませ。」


シャルロット様はそう言うと自分の小指を立てて差し出して来た。
指切りをしろと言っているのだろう。


「こんな所にいやがったのか!」


流石に指切りは、と躊躇していた時だった。
不機嫌丸出しの声でリヴァイが顔を出したのだ。
内心、助かった!ナイス!とアゲハは喜ぶ。


「悪いがコイツは俺のなんでな。返してもらう。」


シャルロット様の顔がポワンと赤く染まった。
まるで自分の恋人を迎えに来たかの様に、リヴァイはアゲハを抱き寄せたのだ。


「それは申し訳ありませんでした。ですが…。」

「お姫様もご存知でしょう?兵隊には多いんですよ。」


リヴァイはそう言うとニヤリと笑う。


『ひっ!』


そしてわざと見せつける様にアゲハの尻を鷲掴みにして見せたのだ。
それにはシャルロット様も思わず口元を手で押さえた。


『何すんだよ!バカ!人の尻を掴むな!!』

「あぁ、悪かった。次は優しくしてやるから喚くな。」


優しくするしないの問題ではなく、いきなり尻を掴むな!と怒るアゲハをそのまま抱える様にするとリヴァイはその場を離れる。
/ 130ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp