第1章 1
ーーーー脳裏に浮かんだのは幼い頃の記憶。
夕暮れ。
公園で近所の男の子に虐められ、喋れなくなるほど泣きじゃくっている私を迎えにきてくれたお母さん。
「おかっ…、おかあさっ…」
「ふふ」
うまく喋れない私に優しく笑いかけると、そっと背中に手を回してくれた。
「いづみ、無理しないでゆっくりお話して良いよ。お母さん、ちゃーんと聞いているからね。」
温かいお母さんの手が、背中で心地よいリズムを打ち始める。
それに呼応するように、段々と涙は止まり次第に呼吸も落ち着いた。
「っ、……お母さん」
「うん。」
「あの…あのね…」
(そうだ、あの時背中をポンポンしてもらったら、なんだか安心して泣きやめたのよね。しかもその後、確か、
虐められたんだって事もちゃんと話せた気がする。う〜ん…高校生男子にやるのはちょっとアレかもしれないけど…でも、即決即断!行くなら今しかない!!)
「真澄くん!」
「…?」
(この角度なら…いける!!!」
「えぇい!」
「うわっ!?」
ベッドのスプリングを利用して右手でバウンドし、飛び込むようにして真澄くんに抱きつ…くはずだった。
「あ、あれ…?」
「いって…。」
見上げてくる真澄くん。覆いかぶさる私。ちょっと待って、この構図って…
「…」
「あっ…え、えと、…ここっこれには深い訳が」
「…あんたって意外と…」
「へ!?や、違くて…!えと、えと…!っ〜!!!」
(ボンッ)
顔が火を吹いた。
(うわあぁあ!?勢い間違えたぁああ!?どどどどうしよう!?あんなしんみりした展開中にこんなことするなんて、絶対空気読めないやつだと思われたよ!!あれ、でも待って…「深夜自室に連れ込んだ高校生を押し倒す2◯歳の私」っていうこの構図…どう考えてもセクシャルハラスメントじゃん!?ま、まままずい!!こんなの誰かに見られたらヒッジョーにまずい!!)
「…ねえ」
「ご、ごごごめん!?謝るからええっと!その…警察には通報しないでー!?」
「はあ?」
(だ、駄目だ…!目が回るし体中が熱くて何言ってるのか自分でもわけわかんない…!)
「と、取り敢えずどくね!」
仕切り直しをするべく退こうとした次の瞬間、
「待って。」
真澄くんの大きな左手がわたしの右手首を掴んだ。
そして、