第4章 3対3
『日向くんはレシーブするときに体制が全く安定していないの』
「?」
『腕だけでレシーブしようとしてる感じ?足はバタバタで全く落ち着いてないっていうか…』
「?」
『だから!レシーブは腕だけでやるものじゃないってこと!!』
「アス!」
『本当に分かってるのかな~···』
さっきから教えているのに一向に上達する
素振りが見えない
ああ、言ってる側から足がバタついてる
こんな調子で3対3大丈夫かなぁ…
しばらく2人の練習が続きそうなので
飲み物でも買ってこようとその場を離れた
校門の前を通りかかると少し離れた所から
真っ黒のジャージを来てポケットに手を
つっこみ、あくびをしながら歩いてくる
坊主あた···田中さんが見えた
田中さんもこちらに気がつくとものすごい
勢いで走ってくる
「せりあさ~~~~んっ!!!」
『た、田中さんっ、まだ朝早いので近所迷惑にっ』
「こんな朝早くからせりあさんに会えた俺は世界一、いや、宇宙一の幸せ者です!!」
『大袈裟です・・・』
抱きつこうと飛びついてきた田中さんを
するりと避けると田中さんはそのまま
地面にダイブ・・・痛そう。
『あの、大丈夫ですか?』
「せりあさんが俺の心配を・・・!」
『そんなことより、どうしてこんなに早く来たのですか?』
私の質問に田中さんの表情はキリッとなる
「せりあさんが俺を呼んでいる気がしたので」
『あはは···』
「というのは冗談で、ほら、アイツらのことだからちょっと早く来て練習とかやりそうだろ?だから」
『日向くんと影山くんなら既に練習していますけど』
「うえっ!!?まじかアイツら···」
『はい。あっちでパス練習をしています』
2人のいる方に指をさすと田中さんは
ため息を1つついてから2人の方へ
歩いて行った
『(めんどくさいから同じチームは嫌だって仰っていたのに、後輩思いの方なんだな)』
小さくなっていく田中さんの背中を
見つめながらふと思った