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アサガオの花

第3章 始まり



『月島くん、本当にゴメンね』


家に着くまでに何回もここで大丈夫、と
言ったのに僕もコッチだからと言って結
局私の家まで送ってもらってしまった。

彼の家が本当に私の家の近くなのかもし
れないけど、恐らく違う

だってご近所さんに “月島” なんて名字
聞いたことないもん

部活もやって疲れてるだろうに遠回り
させてしまって···本当に申し訳ない


ちらり

バツが悪そうに月島くんを見上げると
彼の顔は誰がどう見ても不機嫌MAXだ


『うっ···あの、本当にごめんなさい!』


バッと頭を下げると上から聞こえてきた
のは彼のため息


「あのさぁ、言う言葉違うんじゃないの?」

『?』

「だいたい嫌だったら君なんか置いて先に帰るし」

『···ごもっともです』


確かに彼のペースで歩いていれば私なんて
あっという間に置いていかれる

実際ここに来るまでも何回も距離が
できたし···

まぁ、その度に月島くんはため息をつき
ながらも待っててくれたけど。


『えっと、ゴメンじゃなくて···?こういうときは····』

「僕は君に謝ってほしいから送った訳じゃないんだケド?」

『! 月島くんっ』

「何?」

『ありがとう』


ニコッと笑うとやっぱりそっぽを向かれてしまう

多分だけど、月島くんは正面からこういうことを言われるのに慣れてないんじゃないかなって思う


「チッ」

『君がお礼言えって言ったのに舌打ちってよくないと思いまーす』

「チッ、うるさい」

『あー!2回も舌打ちされたーっ!』

「ハイハイ。僕もう帰るから」


ヘッドホンをしてくるりと向きを変えた
かと思うと何も言わずにスタスタと歩き
始めた


『ほんと、ひねくれてるなぁ』


小さくなっていく彼の背中にぽつり


『月島くん、今日はありがとう』


少しだけ彼の背中を見てから家へと
入った










このときに月島くんが振り返っていたこ
となんて私は知らない


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