第3章 始まり
体育館は部員達の喋り声でざわざ
わとしている
そんな中、私と澤村さんの周りだけ
静かな雰囲気が漂う
『私のこと、知ってたんですね』
「まぁ、な。確信したのはさっきなんだけどな」
『さっき?』
首を傾げる私を見て澤村さんはし
まったと言わんばかりに掌で両目
を覆った
少しすると指の隙間からチラッと私
を覗く澤村さんと視線が合う
「実はさっき日向と影山の様子を見に行ったんだが、ちょうど妃さんが中学の頃の話しをしてて···。まぁ、結果的に盗み聞きになってしまうか」
『そうだったんですね···』
「盗み聞きするつもりはなかったんだが、すまなかったな」
『いえ、隠していた訳ではないので気にしないでください』
「それで、妃さんの話しを聞いた上で聞くんだけど、烏野のマネやってみないか?」
『ぅえ?!』
思ってもいなかった言葉に思わず変な
声が出てしまった
「前みたいな思い切ったプレイは出来ないかもしれないけど、外から俺らのプレイを見て気づいたことや感じたことがあればどんな小さなことでも良い、何でも伝えて欲しいんだ」
『そんなっ!私なんか無理です!』
「無理かどうかは問題じゃない。“やりたい" か “やりたくない" か聞かせて欲しい」
『・・・ッ』
澤村さんの真剣な言葉と、瞳。
心があってそれでもって真っ直ぐと私
の心に突き刺さってくる
“やりたい" か “やりたくない"
そんなの答えは決まってる
『・・・たい』
「?」
『私、やりたいです!烏野のマネ!』
かつて“小さな巨人"がいたこのバレー部で
今度は澤村さん達が主役となって
そのサポートを私がする
それがどんな道になるのか見てみたい
「おお!やってくれるか!!」
『ハイ!よろしくお願い致します!』
「よし!全員集合!!」
澤村さんの言葉にあちこちにいた部員
が集まってくる
「今日からマネージャーになった妃 せりあさんだ!よろしくお願いします!」
“しあーーすっ!!”
澤村さんの言葉に続いて全員で挨拶を
される
さすがに迫力ある。
『よろしくお願い致します!』
私も大きな声で彼らに返す
田中さんはまた涙を流して喜んでいる
清水さんも笑っている
そして澤村さんの言葉で練習が再開した