第3章 始まり
その後、日向くんと影山くんに “ある
事" を伝えると私は体育館へ戻った
あとは日向くんと影山くん次第、かな
体育館のドアを開けるとちょうど休
憩中みたいで体育館の端で皆さんが
ドリンクを飲んだりお喋りをしてい
た
私は体育館の中へ入ると清水さんの
元へと向かう
『あの、清水さん』
私に気づいた清水さんはニコりと笑う
と静かに頷いた
「おかえり。その様子だと日向、影山には会えたみたいだね」
『は、はい』
「大丈夫。妃さんが心配するようなことは何もないから」
それだけ言うと清水さんは3年生の元
へ行ってしまった
清水さんの背中を眺めていたが、突然
後ろから大きな声で名前を呼ばれて振
り返るとそこには涙を流している田中
さんの姿があった
『た、田中さん?!どうかされましたか?』
「うう、せりあさんが戻ってきてくれた」
『えっ?』
戻ってきた?どこに?体育館に?
田中さんの言っていることの意味が分か
らないでいるとドリンクを持った菅原さ
んがひょこっと現れた
「妃さんゴメンね!おいこら田中、あんまし迷惑かけるなよ」
「うっ···けどスガさんんんん」
「はいはい。あんまししつこいと妃さんに嫌われるぞ?」
菅原さんはゴメンねと言って片手を顔
の前に出す
「ほら田中行くべ!」
「う~、妃さーんっ!マネージャーになってくださ~いっ!」
「あ、おい田中!!」
なんだろう、この嵐が過ぎ去ったかの
ような感じ・・・
バレー部を見学させてもらって思った
こと
『皆さん、仲良しなんだなぁ···』
「まぁな」
『?!』
ポツリと言った独り言だったのに返答が
あってビックリして声のする方に向き直
るとそこには笑顔の澤村さんがいた
『あ、澤村さん···お疲れ様、です』
「ああ、お疲れ!」
頬を伝う汗をタオルで拭っている姿は全
力で練習に取り組んでいるんだな、とい
うことが伝わってくる
つい澤村さんのその姿に見入っていると
澤村さんと目が合ってしまった
「ん? 何か俺の顔についているか?」
『あっ、いえ、スミマセン』
「ハハッ、変な奴だな。ところで “妃 せりあ"って全国ベスト8の実力を持つ選手だろ?なんで烏野に?」
『・・・え』