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【HQ】出会いの化学変化。

第2章 名案


嘘、と彼は目の前の不思議な風景を見て、思わず奇声を発してしまった。

いつも頼りになる、あのチームメイトが自動販売機の隣で、見知らぬ女の人と話している。

いや、女の人と言っても少し違う。紺色のブレザー姿で、ツヤ感のあるダークブラウンの髪がおとなしく胸元あたりに垂れている女子高生だった。

ふと、彼女は右手で口元を隠してクスクスと笑った。そしてまた慌てて、笑うところじゃないですね、すみませんと謝った。チームメイトが何かを話したか聞いていないが、まあ大体どこかボケている発言に違いない。


天童は二人の反応を窺えつつ、腕時計をちらっと見た。そして口を開いた。

「若利くーん」

チームメイトは、彼の存在に気づき、こちらを見やった。

「イチャイチャしてる時邪魔して悪いんだけどさ、そろそろバスに行かないとね-」

「そうか」と、チームメイトが彼の妙な言葉遣いに気づかずに頷き、そして女子の方にまた話しかけた。「すまん。もう行く」


はい、こちらこそ止めちゃってすみません、と彼女は丁寧に謝った。うん、なんか可愛い子だなあと天童はニヤッと笑った。
そして唐突に声をかけた。
「ね、君、若利くんの知り合い?」

いきなり声をかけられると顔が少し赤く染まった彼女は、「あ、えっと、はい、すみません」と慌てて会釈した。

俺ってそんなに怖いのかな。

天童は、意地悪な笑みを口に浮かべ、そして少し不満げに言い出した。
「若利くんにばかり可愛い女の子がついてくるって不公平だネ~俺にも話しかけてヨ」

「え、そんなんじゃなくて…あ、すみませんっ」

うん、反応可愛い。

「俺、天童覚!よく覚えといてネ」

彼女は、天童を見つめながら、より冷静になった声で尋ねた。
「あの、ミドルブロッカーの方…ですか?」

「うん、よく見てたじゃん。良い子」

そこで、ずっと黙ってみていたチームメイトが淡々と口を出してきた。「もう行くんじゃないのか、天童」
「仲間が女の子と楽しく話しているところを邪魔して最低だね若利くん」
「行くと言ったのはお前の方だろ」

若利くんって殺風景だね、と天童は愚痴りながら、彼女に手を振った。
「じゃあもう行くから、また会おうね!」

そう言った途端彼は、すでにまた会うことを前提にして、脳内で色々な案を捻り出し始めた。


これもまた、色々楽しませてもらわないとね。


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