第3章 寮にて
決勝戦の後、一階の自動販売機付近にと偶然に会った時、彼女はむしろ気不味そうに見えた。
烏野の紺色のブレザーに赤いリボン。
俺は彼女の制服を見て悟った。
彼女は、俺の敵の応援に来たのだ。俺の勝利を望んでいなかった。
敗者側の俺を見てどう接するのか分からないのも当然だろう。
俺も、彼女が身に纏った勝者側の制服を見た途端、自分の目つきが険しくなったと分かっている。
しかし彼女はその場で俺にこう言った。少し躊躇っているような、切ないような弱々しい声で、俺に言った。
「私、やっぱりまだまだ若利先輩のプレーが見たいと思います」
なぜ敵側だった俺にそう言ったのか。
俺にとって、彼女の言葉は常に、解けぬ謎のように聞こえる。